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急行きたぐにの旅路 [鉄道の旅]

夜行列車に乗りたくて

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無性に夜行列車に乗りたくなりました。思えば夜行には長らくご無沙汰しています。
何時もの思いつき、発作的な旅立ちです。

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▲深夜の大阪駅 まだまだ眠りません

決心したものの今のご時世夜行列車に乗るのはなかなか難しいものです。あれよあれよという間に夜行列車は削減されていき、大阪駅からだと「トワイライト」、「日本海」、「きたぐに」の北陸三羽ガラスか上りの「サンライズ」。大垣まで行って「ムーンライトながら」程度しか選択肢がありません。

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▲22時過ぎの大阪駅上り方面発車標

私のように予算もなければ計画性もない人間にはやはり「きたぐに」がぴったりでしょう。
というわけで深夜の大阪駅に出向きました。ご覧のように22時過ぎの優等列車発車標にはこの2本が表示されているだけ。ちなみに下り方面は「北近畿」が残っているだけ。

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▲かつての11番線も今はなく

平成の大改造工事中の大阪駅10番線に上がってみましょう。
従来の11番線のように優等列車専用の趣のホームはなく、反対側の9番線で新快速を待つ帰宅客が背を向ける10番線が専ら優等列車の発着に充てられています。
23時も近いというのに新快速の乗車位置には数十人の行列ができていますが、こちらは自由席車の表示の下でさえ4・5人程度。なぜか最後尾の1号車に人気があり、そこだけ10人近くが集まっています。運転席や機器室がある分座席は少ないはずですが、なんとなく空いている気がするのでしょう。新幹線でもよく見られた光景です。

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▲583系10連の「きたぐに」

放送どおり23:03、神戸方に3つのヘッドライトが姿を現し大柄の583系で構成された「きたぐに」が入線します。新北ビル建設のしわ寄せでホームが減っている大阪駅にあって発車24分前に入線するというのは何とも贅沢な演出です。やはり、長距離列車の旅立ちはこうでないと。食料を買い込む暇すらなく発車するようでは気分がのりません。
座席を確保した乗客が買い物に、写真撮影にと出発前のひと時を楽しんでいるようです。

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▲工事関係の障害物が林立するホームで発車を待つ

私も荷物を席に置き長いホームを探検します。このホームは9番線の通勤電車は上り方に、10番線の優等列車は下り方にずらして停車させ混雑を緩和する策がとられています。したがって、人の多い京都よりの売店は23時を過ぎても営業していますが、神戸よりの店は既に店仕舞い。2号車に席を占めていた私はえっちらおっちら開いている売店まで行きプレミアムモルツとおつまみを調達します。日頃は第3のビール派の私ですが、たまにはささやかな贅沢も良いでしょう。

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▲万博の年に生まれた

時間がたっぷりあるのでこまごまと列車を眺めることができます。内外装ともに手が加えられていますが、連結面の表示や銘盤を見ているとやはり歴史を感じます。2号車のモハネ582-70は昭和45年、川重製とあります。大阪万博の年に製造されたわけですな。「日本国有鉄道」の銘盤も残っています。

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▲珍品中の珍 サロネ581

車両もオールドタイマーですが、この「きたぐに」という列車も長い歴史を背負って走り続けています。私にとって最も印象に残っているのは残念ながら北陸トンネルでの火災事故です(1972年11月6日発生)。まだ小学生の頃でしたが、「きたぐに」の名前の他、オシ17、石炭レンジなどというキーワードが記憶に残っています。
その「きたぐに」に初めて乗車したのは東北新幹線大宮ー盛岡間が開業した日、仙台まで一番列車に乗った後日本海側に抜け、当時、大阪ー青森間の運転だったこの列車を羽越線余目でつかまえ、京都まで利用しました。この時は車両は12系、新潟から旧型寝台車を連結していました。その後、14系に変わり、さらに583系へと目まぐるしく変わっています。

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▲普通車(左)とグリーン車(右)

長い歴史を誇るだけに「きたぐに」は今日でも数あるJRの列車の中で異彩を放つ存在であることは疑いのないところです。
夜行列車というだけでも希少な存在ですが、加えてレッドブックに登載してもおかしくない絶滅危惧種「急行」であること。しかも優等列車として見る影もなく落ちぶれた姿に身を窶すこともなくA寝台、B寝台、グリーン車連結という堂々たる編成を組んで運転されていることなど正に奇跡といっても良いでしょう。

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▲B寝台(左)とA寝台(右)

なかでもA寝台はこの列車に固有のサロネ581が使用されています。もともとA寝台車は存在していなかった581・583系ですが、改造により誕生した珍種です。それにしてもA寝台が急行列車で生き残っているとは。重ね重ね奇跡としか思えません。

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▲9番線から23:20の新快速が出るといよいよ発車です

発車時刻が迫っても乗客は増えることもなく23:27、定刻に大阪駅を離れます。自由席の乗客は概ねボックス当たり1・2名。空いているボックスもあるのでざっと25%程度の乗車率というところでしょうか。時間も時間なのでこの後状況が大きく変わるとは思われません。

発車前に検札を終えた車掌さんから放送が入ります。「・・・途中到着予定時刻、列車のご案内など詳しいことは次の新大阪を出ましてから・・・」と大阪発上り方面列車に特有の内容です。新大阪までの一駅ではとても詳細な案内はできません。
新大阪を出てもずいぶんゆったりと走ります。高槻停車の新快速が30分で走破する京阪間を「きたぐに」は33分かけて走ります。24:00京都着。
やはり、大した入りもなく発車するとおやすみ放送が入ります。大阪を出て30分余でもう放送終了かと思いますが、すでに日付も変わっています。明朝は5:56着の直江津から放送再開とのこと。

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ところでこの「きたぐに」は湖西線には入らず昔ながらの米原経由で北陸を目指す点でも異色の列車です。しかも停車駅は京都を出ると大津、彦根、米原。新快速停車駅など目もくれずに走ります。優等列車の矜持というものを感じます。

まだ、223系などが続々と帰って来る野洲電車基地を横目に見やり彦根に着くと空いていた隣のボックスにも男性客が。RITSUMEIKAN FOOTBALL TEAM PANTHERSのウインドブレーカーが気になります。続いて停車した米原からサラリーマン風の乗客が乗り込みPANTHERS氏の向かいに座ります。すかさず車掌さんが検札に現れるとPANTHERS氏は「彦根から長浜まで急行券を」と補充券を購入します。短区間利用とわかり相席のサラリーマン氏は内心ほっとしたことでしょう。

この辺りから私の記憶も途切れ途切れになります。敦賀発車後のデッドセクション通過は覚えていても、その直後の北陸トンネルは記憶にありません。福井停車で目が覚めた後は37分停車の金沢も知らず直江津手前までほとんど眠っていたようです。我ながらよく寝たもんです。


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▲久しぶりのJR東の駅名標

「みなさま、おはようございます。本日は2月26日木曜日です。ただ今列車は定刻で運転いたしております。まもなく直江津に着きます」とおはよう放送が流れます。夜行列車に乗っていることを実感できる瞬間ですね。車窓はまだ闇の中。路面が濡れて光っていますが、雪はないようです。

5:56直江津に到着します。JR東日本管内に踏み込むのは久しぶりです。20分ほど停車する間モーニングコーヒーを調達にホームに降りますが、それほど寒さは感じません。隣のホームからは指差喚呼の大きな声が聞こえてきます。乗務教習中と見ました。

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▲直江津に停車中 隣には国鉄色の475系

わずかに空が白み始めたころ直江津を発車します。
ここからは朝一番の優等列車として今までとは打って変ってコマめに停車していきます。

車窓には日本海が姿を現し、青海川を通過します。一昨年の震災に被災した際、映像を見た時は或いは線路付け替えかとさえ感じましたが、見事に復旧している姿に感動を覚えます。
柏崎からまとまった乗車があり車内は一気に活気を帯びてきます。越後線を左手に分かつと内陸に進路をとり、車窓は俄かに雪深くなりようやく「きたぐに」に来たことを実感します。

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▲今回は長岡まで

上越線が姿を現すとわが国有数の鉄道の要衝宮内を通過します。広い構内に何両もの機関車が姿を見せ今も変わらぬ活況を呈しています。かつてはこうした鉄道の町が各地にあったもんですが。

新幹線も絡まるようにして7:14長岡に到着します。

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▲ここで14分停車の後新潟へ

今回は長岡までの乗車としました。終着を目前にして席を立つのは残念でもありますが、この後、北越急行と富山ライトレールに乗りに行く予定なのでいたし方ありません。久しぶりに夜行列車のムードを満喫できました。

というわけで次回は北越急行体験乗車の模様をお伝えする予定です。
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コメント 20

ファジー

改めて「急行きたぐに」をご紹介いただくと、たしかに魅力的な列車ですね。
私も夜汽車に乗りたくなってきました。

これからの越後・越中レポート楽しみにしています。

by ファジー (2009-03-01 08:14) 

あーちゃん&父

お(^o^)は(^○^)よ(^0^)う(^0^)♪
開放のA寝台には乗ったことがありません(^_^;)
あぁ、なんで「銀河」で乗っておかなかったんだ…
きたぐに、583で唯一の定期運用だから原色に塗りなおしても・・と思うのですが。
by あーちゃん&父 (2009-03-01 11:22) 

サットン

ファジーさん

久しぶりに夜行に乗って遠くへ行ってきました。
きたぐになんて天然記念物的列車が身近に走っていたとは!その魅力を再認識しました。果たして何時まで走り続けるやら。

この後、北越急行、富山ライトレールなどが登場します。お付き合い下さい。
by サットン (2009-03-01 12:06) 

サットン

あーちゃん&父さん

A寝台・・・・、料金に見合う商品かどうか正直なところ疑問です。かなり圧迫感がありますよ。空いていれば座席車ですね。
583はやはり新幹線カラーが一番似合っていたように思います。肥満気味のボディを濃青の帯で引き締めて。JR西カラーも良いと思いますが。
by サットン (2009-03-01 12:11) 

hankyu8200

おぉ〜、思いつきの旅。
いいじゃぁ〜ないですかぁ^^。
夜の大阪を出発して朝イチ長岡着ですか。
お疲れさまです^^。
柏崎駅と長岡駅は利用したことがありますけど、もうかれこれ10年以上前です。
北越急行、富山ライトレールのレポ、楽しみですなー^^。
by hankyu8200 (2009-03-01 12:34) 

manamana

家族を持ってから思いつきの旅なんて夢のまた夢です。
それも、583系ですか。
それにしても、丈夫な電車ですね。
富山ライトレール、北越急行も楽しみです。
by manamana (2009-03-01 18:15) 

UZ

お疲れ様です。
きたぐに号は私が新潟在住時、帰宅の際によく発車するところを見ました。私は10年程前に越後線沿線に住んでいまして、ビジネスマンの姿も見かけました。懐かしいです。
583系もアラフォーの仲間入りですか。特急はまかぜの181系の置き換えも決まったようですし、どうなることやら。
by UZ (2009-03-01 22:29) 

のり

北陸線の通し乗車は、新婚旅行が唯一の機会でした。念願の「トワイライトエキスプレス」での旅は、生涯忘れることが無いでしょう。夜行列車が絶滅危惧種である今、稀少な存在ですね。「きたぐに」、昔は大阪・青森間の急行でしたね。かつては臨時急行「あおもり」なんていうのもありました。寝台列車のオンパレードを見ることが出来た時代が懐かしいですね阪急京都線や京阪など私鉄でも「急行」の存在が希薄になってきました。
by のり (2009-03-01 22:54) 

京葉帝都

寝台付電車急行「きたぐに」は短区間でも乗ってみたい列車です。583系は在来線優等電車の最高傑作だと思っています。12系客車時代に青森から富山まで乗車したことがありました。平日なのに満員でした。
by 京葉帝都 (2009-03-02 01:15) 

サットン

hankyu8200さん

いつもの発作が出まして旅の空です。(笑)
きたぐには空いていたこともあってよく眠れましたよ。
懸案だった北越急行、ポートラムにも乗ることができ有意義な旅でした。
by サットン (2009-03-02 13:48) 

サットン

manamanaさん

私は家族からも見放されておりまして。(笑)

583はメンテもよくなかなか快適でしたよ。翌日には格下げ改造された419にも乗りました。北越急行、富山ライトレールともに期待どおり楽しい路線でした。
by サットン (2009-03-02 13:52) 

サットン

UZさん

きたぐには上下ともに新潟口では短区間利用が多いようですね。今や貴重な夜行急行、がんばって走り続けてほしいと思います。
えっ、181置き換えですか!?
by サットン (2009-03-02 13:56) 

サットン

のりさん

ハネムーンはトワイライトですか!?筋金入りですね!
私もチョンガーの時に乗りました。楽しい旅だったことを覚えています。
夜行に乗ろうと思い立ち改めて選択肢の少なさを痛感しました。
by サットン (2009-03-02 14:02) 

サットン

京葉帝都さん

おっしゃるとおり581・3は、そのアイデア、技術ともにエポックメーキングな車両ですね。ただ、器用貧乏と言おうか・・・・
かつて、雷鳥に使用されていたこともありましたが、今は幻ですね。
by サットン (2009-03-02 14:07) 

keroro

すごい、すごい。北国に乗りたーいです。
大阪から北陸方面へ行くんですね。
かなり魅力的な乗り物ですね。
夢が膨らんでしまいます♪
by keroro (2009-03-04 22:47) 

サットン

keroroさん

きたぐに良かったですよ!
少なくなった夜汽車の中でも実に夜汽車らしい列車です。
日本海側を行くというのも渋いですな。
by サットン (2009-03-05 10:57) 

うたに

こんばんは。
コメントしたつもりでいて、忘れていたことに今頃気づきました(^^;)

583系急行きたぐに。個性的な夜行列車ですよね~!
私は583系は、急行津軽(だったかな)で乗りました。ボックス座席の夜行列車でしたが、乗客の一部が勝手に座席を寝台化していて、その人は車掌に見つかり怒られてたなぁ(笑)

きたぐにも、ほくほく線も、北陸新幹線が開業するとどうなるか…ちょっと心配です。
by うたに (2009-03-07 22:03) 

サットン

うたにさん

わざわざ戻ってきて下さりありがとうございます。(笑)
きたぐには昔ながらの夜汽車の風情を残す列車としては最後の存在かと思います。
私の友人も「簡易寝台」常習者でよく車掌さんに怒られていましたよ。
きたぐにの将来、最近のJRの夜行は不要という方針を見ていると明日はどうなるやら。
by サットン (2009-03-09 11:27) 

OCEANBREEZE

特急雷鳥が新潟までの直通運転をやめた後
帰省によく使っていました。ワタクシは長岡出身です。

一度行楽シーズンに帰省した時は、糸魚川あたりまで座れずに
地べたに座り込んでいたこともありました。黒部かどこかへ
行かれる方が沢山乗られていたようでした。

by OCEANBREEZE (2009-03-15 01:58) 

サットン

OCEANBREEZEさん

そうですか、長岡のご出身でしたか。今回は残念ながら乗り換えだけでした。
夜行で座れないというのはキツイですね。スキーヤーを満載した「ちくま」の姿などついこの間のことのように思いますが。
きたぐにも何時まで走り続けるやら・・・・
by サットン (2009-03-15 11:57) 

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