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こうや花鉄道でワンデイトリップ ~奥の院を歩く [鉄道の旅]

天空都市を彷徨う

高野山駅前から南海りんかんバスで奥の院前に向かいます。時折ヘアピンカーブに身を傾げながら約15分、運賃400円です。奥の院を目指したのは特に意味はありません。バスの行先の大部分が奥の院前であること。25年前に来た時も奥の院を訪ねたからです。正直なところなにも予習をしておりません。

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▲奥の院への入口付近

バスを降り中の橋から奥の院を目指して歩きます。私の身体がいつまで持つか不安ではありますが、すべてはお大師様のお導きに任せるということで。・・・日頃は無信心な私ですが、こういう局面では運を仏に任せてしまいます(笑)・・・罰当たり者!

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▲コーヒカップは上島珈琲、右の像はなんでしょう?

弘法大師の廟までの道は樹齢数百年の杉の樹林の中、延々と墓標や企業・団体・戦友会などの慰霊塔などが並んでいます。上の画像は企業の慰霊塔のうち目立ったものを2件。左は上島珈琲、では右はどこでしょう? この動物、アルコール好きの方にはお馴染みですね。そう!麒麟麦酒のものです。他にも作業服姿の像が建つ日産自動車や翼をかたどった新明和工業などが目立っていました。しかし、死んでからも会社員って考えますね。

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▲昼なお暗い杉の樹林

徳川家に加賀前田家、石田三成の墓(順序は覚えていません)などを見ながらよろよろと歩きます。それにしても外国人客の多いこと! これも世界遺産効果でしょうか。日本人にとっても独特に映るこの光景、異文化圏の人たちにどれほど印象的に見えているかは想像に難くありません。
無事に奥の院にお参りし、来た道を引き返しますが、なかなかバス停に辿り着きません。沿道の石碑も見覚えがあるようなないような。ひょっとして迷子に・・・。寒いものを感じたのは高野山の冷気のせいだけではないでしょう。
やっとバス停に辿り着いたと思ったら一の橋口でした。あれー、来た時の奥の院前よりもずいぶん駅寄りのバス停です。あー、疲れたはずですわっ! 俄か仏教徒に罰が当たったわけですな。

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▲ケーブルは下りの方が怖いのです

再び南海りんかんバスで高野山駅に戻り難波までの乗車券を求めますが、なんと券売機はなく、窓口が一つ開いているだけ。ケーブルの発車時刻は迫って来るし焦ってしまいました。
ぼろぼろになった身体にムチを入れなんとか駆け込み乗車。ゴロゴロと極楽橋へと吊り下ろされます。下りのケーブルカーというのはほんとうに迫力満点! いい精神修養になりました。

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▲橋本までは最新の2300系で

冷や汗タラタラで極楽橋に到着。ここが極楽橋といわれる所以がわかったような気がします。
ここからは17:22発橋本行各停に乗車します。ホームを見ると山線用ズームカーの最新モデル2300系が停車しています。一度乗ってみたかった車両だけにワクワク気分で近付くと、ガーン、2両編成の車内は既に立ち客が。途中で空くことはあり得ず立ちっぱなしを覚悟します。

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▲快適そうな2300系の車内・・・ただし、座れれば(往路橋本にて)

ここで、その2300系について一席。高野線の橋本以南、いわゆる山線は急勾配、急曲線が連続するため特別仕様の車両、通称ズームカーしか入線できません。ブレーキ性能など種々の基準があるようですが、外見上の特徴は急曲線を通過するため車長が一般車の20mに対して17mと短くなっているのが目につきます。そのズームカーの中でも2300系は最新鋭、車内はクロスシートを装備、窓もワイドサイズになっています。これは開発中に高野山が世界遺産に指定されたため急遽アップグレードされた結果だといわれています。
また、4編成それぞれに花の名が付けられており、今回乗った2303Fは「しゃくなげ」を名乗ります。車体側面とヘッドマークに記されていますが、上の写真はピンボケのため前記事冒頭の写真をご覧下さい。ヘッドマークに車番2301と「さくら」がデザインされています。ちなみに他は「はなみずき」、「コスモス」と名付けられています。

さて、私はドア横に立って暮れなずむ車窓を楽しみます。往路は天空の車内観察に気を奪われ車窓を眺める余裕はなかったのですが、山線の景色にあらためて心を惹かれます。土讃線新改付近の光景を思い浮かべました。それほど山深いなかを下って行きます。

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▲りんかん12号指定券と車内

橋本駅手前の紀伊清水で列車交換のため4分ほどの停車の後18:06橋本着。多くの乗客が隣の急行難波行に乗り移りますが、われわれは同じホーム前方に停車中の特急りんかん12号に乗り換えます。特急仕様のズームカー31000系の4連。特急料金500円がかかりますが、くたくたに疲れているのでリクライニングシートはありがたい。この列車、われわれが乗っている2号車は乗客わずか4名。この後、林間田園都市、河内長野、金剛で一人ずつ乗客を加えますが気の毒なほど空いています。

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▲難波に到着後折り返し準備中の「りんかん」31000系

車窓は既に真っ暗。デッキの自販機でコーヒーを買い車内を眺めます。グレーのシートに朱鷺色のカバーは南海特急車の標準仕様。前後のLED式情報案内装置にはニュースがスクロール表示されています。凝った照明は南海の伝統、荷棚下にも蛍光灯が並びます。しかし、全体的には極めてシンプルな造作になっています。壁面など一体成型されたプラスチックが艶消し処理もなく光沢を放っています。同じ高野線特急車でも先代デラックスズームカーの流れをくむ30000系とはずいぶん違いを感じます。

街灯かりが眩しくなり、堺東・天下茶屋・新今宮とコマ目に停まり通天閣のネオンに迎えられ18:51難波に戻って来ました。
思いつき、出たとこ勝負の日帰り旅行でしたが、いろいろと刺激的な高野山往復でした。母曰く「いろんな電車に乗れておもしろかった」。私の下心は見抜かれていたようでした。

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▲高野山豆腐ロール

お土産はこれ。高野山もロールケーキブームのようです。豆腐ロールというのに惹かれましたが、風味は幸か不幸か普通のバニラケーキでした。

次回は「天空」の乗車ルポをお伝えいたします。


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コメント 24

manamana

2人と1人掛けの椅子なので、
ゆったり座れそうですね。
高野線は乗ったことがないので、
機会があったら乗ってみたくなりました。
by manamana (2009-10-10 07:05) 

まるたろう

自分も3月に奥の院へ行った時、行きは中の橋、帰りは一の橋という、
サットンさんが歩かれたのと、同じルートでした。
自分もその時迷って、本当に大丈夫かなと思いましたね。
2300系も乗りましたけれど、編成ごとに花の名前が付いているとは
気が付かなかったです。
by まるたろう (2009-10-10 14:04) 

ホタルの館

大阪府南部・和歌山方面と言うと、4枚目の写真のように木々に囲まれたイメージがあります。
by ホタルの館 (2009-10-10 14:06) 

takechan

企業の慰霊塔、っていうのも面白いですね。さすが高野山。
by takechan (2009-10-10 15:53) 

夏海

こんばんわぁ♪
ケーブルカーの写真を見て、香港のピークトラムを思い出しました。
同じく恐かったですよ。。。
傾斜もそうだし、途中止まるとユサユサ揺れるんですもん。
いろいろな電車に乗れて面白かったなんて
お母様の言葉が微笑ましいですね~♪ 
>罰当たり者! ←そんな事ないですよ!私もですから~(・∀・)ニァニァ
電車乗ったり、歩いたり疲れるけど出掛けるのは楽しいですよね♪
by 夏海 (2009-10-10 18:04) 

schnitzer

楽しそうな日帰り旅行ですね。
お母様の言葉がナイスですね!
by schnitzer (2009-10-10 22:29) 

haru

お母様も”乗り鉄”の仲間入りですねっ^^b
豆腐ロールケーキ・・・中味がみたかったです~
by haru (2009-10-11 07:18) 

サットン

manamanaさん

2300系、お薦めですよ!クロスシートだし、何より大きな窓が
魅力的です。高野下以南の素晴らしい車窓を楽しむにはもってこい
です。天空より良いかも(笑)
by サットン (2009-10-11 09:27) 

サットン

まるたろうさん

まるたろうさんも迷われましたか。往きは順路表示が出ていますが、帰りはほとんど案内ないですもんね。右も左も石塔だらけで目印もありませんし不安になりました。
2300系、こうや号や天空の陰に隠れてますが、良い電車ですね。
by サットン (2009-10-11 09:34) 

サットン

ホタルの館さん

見事な杉の樹林ですね。それぞれ番号を振って管理しているようです。
花粉症の人には地獄でしょうけど。
by サットン (2009-10-11 09:36) 

サットン

takechanさん

おや?HN変わりましたか。そういえば以前のHNって重複していたような。
企業の慰霊塔、各社プライド賭けて競ってます。でも、死んでまで会社組織に残りたくはないですわ(笑)
by サットン (2009-10-11 09:42) 

サットン

夏海さん

香港ですか?行ったことないですが、景色はずいぶん違うと思いますよ。見えるのは山と空だけ。でも、夜の景色ってどんなだろうと思いますね。
ケーブルカーは鉄道とはいいながらワイヤー一本に命を預けてるって感じですね。子供ははしゃいでましたが、私は・・・・
自分の日頃の行いを考えるとやっぱり罰当たりです(笑)
by サットン (2009-10-11 09:52) 

サットン

schnitzerさん

大阪近郊にこんな非日常の場所があるとは認識を新たにしました。今度は高野山メインで行ってみたいと思います。
母は、面白かったと言いながら天空では爆睡しておりました(笑)
by サットン (2009-10-11 09:57) 

サットン

haruさん

母は、私が幼いころからの犠牲者です。なにしろ日頃から気に入った電車が来るまで待ってましたから。
豆腐ロールの見た目は普通のロールケーキ。食べてもバニラとかわりませんでしたよ。味覚が衰えてるんでしょうか(笑)
by サットン (2009-10-11 10:05) 

京葉帝都

現在の高野山は結構賑わっているのですね。
鉄道での入り込みは増えていないかもしれませんが。
サットンさんのレポートで小学生の時に行った高野山のシーンが少し蘇ってきました。当時は宿坊で一泊しました。
奥の院の灯籠や根本中堂など。
極楽橋駅やケーブルの駅は全く変わっていないかと思います。
当時乗車した電車は往復共急行で緑色の旧型車。満員でした。
付け替え前の紀見トンネルでは、全開の窓から冷気が入ってくるわ、大きな白熱灯の照明が目の前を連続してよぎるわ、でさながら地底探検のようでした。
by 京葉帝都 (2009-10-12 00:14) 

UZ

お疲れ様です。
高野線も10年以上ご無沙汰していますが、新車投入やダイヤの事実上の分割など様変わりしていますね。私も興味津々で拝見していました。

橋本を境にした観光路線と都市圏路線との差異が十分に分かりました。でも多客時には橋本以南であっても車両のやりくりも大変でしょうが、編成増強や臨時電車を出したりしてほしいものです。
by UZ (2009-10-12 09:35) 

のり

高野山レポート、楽しく拝見させていただきました。
私の実家も真言宗なのですが、高野山はまだ訪れておりません。高野線の超山岳区間とともにまだまだ憧れの場所です。
ズームカー21001・22001の代替として大量投入した2000系ですが、高野線のダイヤ大幅見直しにより、その扱いに苦慮しておられた由。新車の2300も大阪に姿を現すことがめっきり少なくなってしまいました。
22001系が「天空」に姿を変えて、復活するとは、予想だにいたしませんでした。
by のり (2009-10-12 10:34) 

undo

高野山自然がいっぱいですね。歩いてもあまり汗をかかないこの時期のお散歩にはぴったりかもしれませんね。

500円で座って行けるんだったら間違いなく選んじゃいそうです。あっしの場合はコーヒーではなくビールになっちゃうので500円以上の投資になっちゃいますが。
by undo (2009-10-12 14:00) 

うたに

やっぱり高野山はすごい所のようですね。背丈の高い木々に囲まれると、なんだか自分がちっぽけに感じて謙虚な気持ちになれます。

「気の毒なほど空いている」列車に私もたまに遭遇するのですが…空いてて快適だけど、これで大丈夫なのか? 心配になってしまう感じが良く出ている表現ですね(^_^;)
by うたに (2009-10-12 17:03) 

サットン

京葉帝都さん

昔から高野山というと大阪からの林間学校の定番でしたね。さすがに下界と比べてかなり涼しかったです。
世界遺産効果かミシュラン効果かわかりませんが、外国人客が多いのは驚きました。帰路の電車にもグループ客が乗っていました。
以前のズームカーは緑の電車でしたね。現在はダイヤも橋本で分断されていて山線はローカル線扱いです。
by サットン (2009-10-12 20:42) 

サットン

UZさん

ここ数年で高野線はすっかり様変わりしたようです。橋本での系統分割が大きく影響していますね。
山線は安全上2ユニットが必要なため在来車は最低4連で運転されていますが、輸送力過剰とのことで2300系はシステムを2重化して2連で運転可能とのこと。車内設備は快適ですが混雑時には輸送力不足という皮肉な状態が生じているようです。
by サットン (2009-10-12 20:52) 

サットン

のりさん

山線の車窓は素晴らしいですよ。以前乗った時の記憶がとんでいるのが不思議なくらいです。
2000系は本線にも転属して普通に運用されていますが、ふさわしい働き場所とはいえず気の毒です。
天空の里帰りも皮肉ですね。
高野山是非お訪ね下さい。罰があたりますよ(笑)
by サットン (2009-10-12 20:58) 

サットン

undoさん

高野山は既に長袖シャツでも肌寒い状態でした。
ビール代がかかるのであれば2300系をお薦めします。窓が大きく天空よりも眺望は良いと思います。
by サットン (2009-10-12 21:03) 

サットン

うたにさん

さすがに霊場高野山ですね。凛とした空気を感じました。
極楽橋からの各停は座れないほど混んでいたのに橋本からのりんかんは本当に空いていました。空いているのも程度の問題ですね。なにやら寒々としたものを感じてしまいます。
by サットン (2009-10-12 21:09) 

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