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南海「天空」に体験乗車 [鉄道の旅]

世界遺産へ期待のコンセプトトレイン

世界遺産指定に加え、ミシュラン ギド・ベールで3ツ星を獲得した高野山。その高野山へ路線を伸ばす南海電鉄がさらなる観光客の獲得を目指して投入したコンセプトトレインが「天空」です。そのコンセプトとは南海のパンフレットを要約すると「日常からの脱却を図るための精神世界へのゆっくりとしたアクセス」だそうです。
その天空に乗ってみました。ハード、ソフトともに新たな試みが満載のこの列車、その仕上がりは如何に。

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▲橋本駅側線で折り返し準備中の「天空」 クーラーカバーまで緑色


◆オフライン予約の功罪

天空の座席予約はラピート、こうやなどの指定席を発券するオンラインシステムからは切り離された電話予約です。個人予約は10日前からの受付となり前日の17時で締め切られます。予約が成立すると予約番号を言い渡され、乗車当日下りは橋本駅ホーム極楽橋寄りに特急券売り場とは別に設けられた“天空指定券引換所”で料金(一人500円)を支払い発券を受けます。上りは極楽橋ではなく高野山駅出札口での対応となります。予約をしていなければ残席がある場合に限り引換所で当日購入が可能です。ただし、いずれも発車10分前に締め切られますので要注意です。

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▲橋本駅天空指定券引換所

さて、このオフライン予約、人数や好みに合わせて座席を予約できるという点では乗客側にメリットがあり(席番までは指定できない)、鉄道側には上手く席を割り振ることで虫食い状態を回避できるというメリットがあります。
他方発券作業に手間がかかり、そのためか発車10分前に締め切りという乗客側には理不尽ともいえるデメリットが生じます。実際この日も窓口クローズ後にやって来た乗客が通りすがりの乗務員に窓口を開けてくれるよう要請し混乱する場面がありました。この締め切りの事情には途中停車駅である学文路、九度山からの乗客に対応する乗務員へ引き継ぐための手仕舞い上必要となったものとも想像できます。

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▲2200系を大改造した天空用車両 窓は案外小さい


◆天空3号 橋本ー極楽橋

10月4日(日)の13:22発、天空3号に乗るため橋本駅までやって来ました。事前予約はしてないので発車40分前の売り出し開始時間に間に合うよう余裕を持って正午過ぎには到着。当日券は出たとこ勝負の早い者勝ちです。当然引き換え窓口はまだシャッターを下ろしています。当日券残席表示には何も記されておらず運を天に任せて駅前を散歩した後ころ合いを見計らって再び引き換え窓口へ。「お席はお任せ」で無事に指定券をゲット。ちょうど難波からの列車が到着し、たちまち列が伸びます。

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▲売り物のワンビュー座席ですが・・・・・

JRホームに隣接した島式1面の高野線ホームに数十人の乗客が集まったのを見届けたかのように側線で待機していた天空編成(この日の自由席は2000系)4連が入線してきました。発車時刻の2分ほど前。これでは列車とともに記念写真を撮ることさえままなりません。橋本駅のホームが多忙なのはわかりますが、余裕を持ったダイや編成も観光列車には極めて重要な演出ではないでしょうか。インパクトの強い「天空」だけに乗客は列車とともに記念撮影を望んでいるはずです。
結局撮影もままならず、せき立てられるように車内に入ります。

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▲ワンビュー座席“1列目”と書院造に由来する“円窓”

指定された席は極楽橋寄り先頭車である1号車のワンビュー座席2列目です。この列車のウリである丹生川の眺望を楽しめるよう座席の多くが進行右側に向かって設けられています。それに合わせて“谷側”のみ窓がパノラマタイプに改造されています。加えて2列目の席は眺望を確保するため床がかさ上げされているのですが、ここで問題点が。かさ上げは良いのですが、窓のサイズが対応できてない。左右寸法は拡大されていますが、天地方向はそのまま、或いは写真で見ると改造前の窓よりも縮小されている。従って2列目からの視線は窓枠上部辺りになり見通しが悪い。その証拠に2列目の乗客は写真のように席を離れフリースペースに移動しております。

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▲展望座席とフリースペースの畳席

そんなフリースぺースの中でも人気なのはやはり運転席のかぶり付き。特に高野下を出た辺りからは急カーブが連続し迫力満点です。ちなみに運転席後部の展望座席は左側に2人組、右側には3人組の乗客がアサインされていました。展望席も少しかさ上げされているようです。加えてズームカー共通仕様として運転席後部の窓には遮光フィルムが張り付けられトンネルが多い区間でもカーテンを開放、なんとか視野を確保してくれます。

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▲上古沢で特急こうやと交換のため運転停車

一方車窓の方は橋本を出るとすぐに紀ノ川を渡り1列目の乗客から歓声があがりますが、高野下までは鄙びたローカル線という風情。登山鉄道というには平凡な車窓が展開しますが、高野下を出ると一変して険しい崖っぷちを進みます。勾配標も50(‰)の数字が目立ち始め、今まで談笑していた乗客も車窓に食い入っています。女性アテンダントの案内放送も熱を帯び始めいよいよ登山鉄道の本領発揮です。単線区間のため上古沢、紀伊細川で運転停車、上り列車と交換します。いずれも山間の小駅ですが、駅員さんの姿がありました。年配の運転士さんは客室との仕切り扉を開放し、交換風景を間近に見られるよう子供たちにサービスしています。

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▲フリースペースのカウンターテーブル


◆もう一工夫ほしい車内設備

天空には観光列車らしく様々な仕掛けが施されています。客席には前述したワンビュー座席、展望座席の他、グループ客のために4人単位のコンパートメント座席が設けられています。なかでも2号車運転席寄りの区画は展望デッキとの間の独立した空間となっており8名ならば完全な貸し切り状態です。ただし、営業運転中は常に自由席車が連結されているためかぶり付きは楽しめません。

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▲大手民鉄唯一の展望デッキ

一方、フリースペースにも様々なアイデアが盛り込まれています。そのなかでも最大のセールスポイントが大手民鉄車両で唯一と標榜する展望デッキ。2号車の難波寄りに設けられ、元々ドアがあった部分の上部をオープンにし、下部を格子で仕切っています。監督官庁の厳しい安全審査にパスした力作とか。今どきの列車には貴重な風を感じる空間です。山の空気とレールの軋む音を満喫できます。1号車の難波寄りドア跡も天井から床面までガラスがはめ込まれ迫力ある車窓が楽しめます。

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▲展望デッキからの眺望(紀伊細川)

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▲難波行快速急行と交換します

これらの工夫は評価できますが、細かなところに詰めの甘さが見られます。荷物棚は通勤電車時代のものがそのまま残されていますし、展望座席の脚台に張り付けられた地肌むき出しのステンレスパネルも無神経なものを感じます。眺望のきかないワンビュー座席も然りです。
この種の列車についてはどうしても先駆的存在である水戸岡鋭治氏の作品と比較してしまいます。氏の細部まで徹底したデザインが高い評価を受けているポイントであるとあらためて痛感します。

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▲約40分で極楽橋に到着 乗客はそそくさとケーブルカー乗り場へ

今さら大規模な改修はできないでしょうが、細かな点は適宜改善しブラッシュアップを図って欲しいものです。ソフト面でも予約、発券方法の再検討。ゆっくり記念撮影のできる余裕をもったダイヤの導入など改善すべき点が散見されます。
※ 鉄道ジャーナル誌10月号によると当初今秋を予定していたデビューが半年繰り上げられたとのこと。突貫工事の影響かもわかりません。

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▲あまり報じられない“裏側”のサイドビュー 

とはいえ京阪神から日帰り圏に素晴らしい車窓を楽しめる路線があることを再認識させてくれた天空の旅でした。
南海は箱根登山鉄道、富士急行、大井川鉄道、叡山電鉄、神戸電鉄と組んで「登山鉄道パーミル(‰)会」を結成、共同プロモーションなどを展開していくとのこと。新たな鉄道旅行の魅力が発信されることを期待します。
そういえば、ほぼ同時期にデビューした富士急の「富士登山電車」が気になるところ。あちらは水戸岡氏の作品です。


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takechan

今のご時世、電話予約ってレアですね。
色もレアだし、楽しそう。
by takechan (2009-10-12 21:38) 

まるたろう

車内は雰囲気的に、自分は「いさぶろう・しんぺい」を思い出します。
一度乗りに行きたい列車には、間違いないですね。
それにしても神鉄が、「登山鉄道パーミル会」に入っているとは。
確かに、湊川~鈴蘭台は結構登りますからね。
by まるたろう (2009-10-12 22:35) 

schnitzer

天空号、私的には"あり"だとおもいます。
まるたろうさんのおっしゃっているように九州のいさ・しん、はやとの風に通じるものがありますからね。
by schnitzer (2009-10-12 23:24) 

ケイ

お久しぶりです。
僕も鉄道好きになろうかな(笑)
by ケイ (2009-10-13 00:12) 

manamana

わくわくする電車ですね。
ちょっと奮発してデザイナーに力を借りれば
もっと良かったのかもしれませんね。
by manamana (2009-10-13 06:57) 

テンやもん

以前から気になっている列車です。
このレポートを見てから更に乗りたくなりました。♪~

文化の日前後ぐらいに乗り行こうかと思います。

まだ写真を撮っていないから、写真も撮らねば!!
by テンやもん (2009-10-13 10:23) 

うたに

左右で車両の様子が異なるのですね!
種車が通勤車両だと限界があるのかもしれませんが、かなり頑張って改造されている方だと思います。
あとは、指定席発券がちょっと敷居を高くしている感じがするので、多くの人に乗ってもらえるよう、ソフト面の改善にも期待したいですね。

やっぱりこういう観光列車に乗るのはワクワクします!
50パーミルの急勾配を登っていく様子、楽しいだろうな~(^ ^ )
by うたに (2009-10-13 12:35) 

ホタルの館

あ、もう完成したんですね!
数ヶ月前にニュースリリースで見て話題になっていましたけど。
ちょうど、阪急が6300系の廃車を進め、一部編成だけ改造して嵐山線に回して話題なっていたころ。
阪急もこういう観光列車があってもいいけど、嵐山線や他の支線は短距離ですしね・・・。
あと、本線はビジネス的な利用が大きいですから、あまり南海のように観光電車は向かないし・・・。
阪急は今の状態でいいですね(^_^;)
by ホタルの館 (2009-10-13 14:43) 

サットン

takechanさん

ネット予約全盛の時代に電話予約、なんとなく面倒で当日勝負でした。
天空カラーは高野山の森の緑と根本大塔の朱をモチーフにしているそうです。なんだかんだ言いながら楽しい列車でした。
by サットン (2009-10-13 20:09) 

サットン

まるたろうさん

私も「いさ・しん」をはじめとする水戸岡デザインの車両を想像していました。木をふんだんに使ったり、様々なシートがあったり、似てはいるんですが。
神鉄も立派なパーミル会メンバーですよ。高野線と同じ50‰の急勾配がありますから。新開地ー有馬温泉に観光列車を走らせてほしいですね!
by サットン (2009-10-13 20:16) 

サットン

schnitzerさん

確かにJRQの車両に通じるものはありますね。でも、似て非なるものかな・・・・。やはり、水戸岡デザインと比較すると詰めの甘さを感じてしまいます。
でもウキウキする列車ではありますね。
by サットン (2009-10-13 20:27) 

サットン

ケイさん

道路も良いですが、鉄の道も良いもんです(笑)
いつでもこの世界にお越し下さい!
by サットン (2009-10-13 20:30) 

サットン

manamanaさん

天空のインテリアはコンペ形式で選定したそうなのでそれなりのデザイナーさんが手がけているはずですが・・・
予算か工期を削った跡が見え隠れしますね。
by サットン (2009-10-13 20:35) 

サットン

テンやもんさん

この記事をご覧いただいて乗りたいと思っていただけたなら光栄です!南海も喜んでくれると思います(笑)
期待が大きかったので少々辛口の評価になりましたが、500円の価値は十分にありです。
運転日が減少する12月になる前に是非どうぞ。
by サットン (2009-10-13 20:41) 

サットン

うたにさん

おっしゃるとおり左右非対称の珍しい車両になりました。確かに気合を感じますが、キハ47をあそこまで叩き直しているJRQに比べるとまだまだかな(笑)
50‰となるとさすがに勾配を実感できます。山線の魅力はなかなかのものですよ。
by サットン (2009-10-13 20:57) 

サットン

ホタルの館さん

当初は秋デビューを予定していたものを前倒ししたんだそうです。
阪急ですか? 嵐山線でも10分弱ですからね。観光列車よりも京都線の特急を立て直す方が急務でしょうね。
関西では叡山電鉄のパノラマ電車「きらら」が良い感じだと思います。
by サットン (2009-10-13 21:10) 

ファジー

生の体験談がおうかがいできて大変参考になりました。
今後の利用の際の参考にさせていただきます。
しかし、屋根の上の設備まで同じ色にしなくても・・・と思うのですが。
by ファジー (2009-10-13 23:54) 

サットン

ファジーさん

ちょっと辛口になりましたが、是非天空で精神世界への旅をお楽しみ下さい。
私もクーラーカバーを塗装するなら車内の造作をもう少し丁寧にすべきじゃないかと思います。
でも、久し振りの山線の風景は感動ものでした。
by サットン (2009-10-14 09:05) 

夏海

「天空」のコンセプト・・・精神世界とかって表現が凄いですね^^;
畳の座席があるのも面白い!
座席の向きがこういう感じのを
叡電で1回乗った事があるけど良いですよね~♪
それにしても、オンライン予約が出来ないって不便だと思います。
だけど電話予約で取れるならまだ許せるような気も・・・
遠くから観光で来て取れないよりはマシだと思いますからね。。。
明日から2泊で出掛けるのですが
乗ってみたい電車があったのに週末しか走ってないらしく残念です。。。
by 夏海 (2009-10-14 13:30) 

undo

いまどき電話予約しかないって珍しいというか感覚がずれてるというか・・・。南海電車のHPみたら座席表とかまでご丁寧にアップしてあるのに・・・。あんなの見たら座席選びたくなっちゃいますね。(苦笑)

サットンさまが行かれた日はお天気もばっちりだったようですし、"オトナの遠足"気分で乗るにはもってこいですね。
by undo (2009-10-15 01:21) 

サットン

夏海さん

精神世界ってどんな世界か今ひとつ分からないんですが、高野山、特に奥の院への樹林を歩いていると独特の空気を感じます。無信心な私でも背筋が伸びるような。
電話かけるのも面倒だし、夕方5時までなのでつい機会を逸してしまい当日勝負に出ました。取れなかったら自由席でいいやって気分で。
叡電の「きらら」は凄い! あれだけの車両に乗車券だけで乗れるんですから。太っ腹!
またお出かけですか(笑) 良い旅を!!
by サットン (2009-10-15 12:31) 

サットン

undoさん

電話予約の理由は効率的に配席するためといわれていますが、確かに複雑なレイアウトなので予約システムのプログラムを刷新する方がたいへんだったのでしょうかね。HPの座席表、席番は消しておいた方がいいかもわかりません。
高野山の涼しさが心地よいと感じるのは今シーズンで最後の日だったかも。たっぷり森林浴を楽しめました。
by サットン (2009-10-15 12:38) 

keroro

ふむー。なるほど。
天空に乗ってみたいと思っていました。高野山に行きたいから。
内部はこんな感じなんですね。
お一人様でも楽しく行けるのかなぁ。
乗っている人はみんな楽しそうですね♪。

by keroro (2009-10-18 15:10) 

サットン

keroroさん

高野山へのアクセスに選択肢が増えたってことで。
もちろんお一人様でもOKですよ。その方がゆっくり景色を楽しめるかも知れませんね。
やはり観光列車なので寛いだのんびりムードが漂っていました。
by サットン (2009-10-18 21:22) 

夏海

叡電ですが、あの車両に乗車券だけで乗れるって凄い事なんですね!?
何気に慌しく乗っただけでしたが
次回はジックリ楽しんで乗ってみたくなりました♪
by 夏海 (2009-10-19 17:00) 

ドラもん

上高地線もバス込みで「登山鉄道パーミル会」に加入できないでしょうか。
コンセプトから外れてしまいますかね。
by ドラもん (2009-10-20 21:11) 

サットン

夏海さん

すごいですよ!叡電。天井まで張り上げられた窓など眺望の良さなら天空を凌ぐものがあります。市街地を走ってるとわかりませんが、鞍馬が近付くと山あり谷ありで本領発揮!これからのシーズンは良いでしょうね。
by サットン (2009-10-20 23:45) 

サットン

ドラもんさん

パーミル会の入会基準ってどうなってるのやら(笑)
ちなみに勾配を基準とすると一番緩い富士急で40‰ですが。

by サットン (2009-10-20 23:49) 

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