乗りつぶし 若桜鉄道編 [鉄道の旅]
冬の山陰雪見旅 3
この記事を「乗りつぶし」に分類するかどうか悩みました。というのも若桜鉄道は未乗ながら若桜鉄道が走る郡家ー若桜間には国鉄若桜線時代(’80年4月)に乗っているからであります。乗りつぶしを志す者、事業者が変更された後の扱いをどうするかは基本的なルールのはずですが、私は例の如く大雑把であります。とりあえず31年ぶりに若桜駅を訪問してみます。
◆鳥取ののりものたち
▲近代的な鳥取駅ですが・・・・(南口)
ホテルを9時過ぎにチェックアウトし、鳥取駅へ。歩道上は除雪されているものの脇にそれると2~30センチの雪が残っています。
高架化され一見大都市圏の駅にも見える鳥取駅ですが、活気がありません。ショッピングゾーンの「シャミネ鳥取」も2階部分は閉鎖中でした。
鳥取県の人口は58万人余。47都道府県では最少です。
▲鳥取といえば日ノ丸バス
列車の出発まで少し時間があるので駅前でバス見物を。
鳥取のバス事業者というと日ノ丸バスと日本交通ですが、日本交通は撮り逃しました。
▲ループ麒麟獅子バス
そのかわりにこんなバスが。
市内の名所を巡る路線バス「ル-プ麒麟獅子」。最近各地で目にするレトロ調ボディです。
▲山陰のスター キハ187系「スーパーまつかぜ」
バス見物の後はちょこっと列車も見物。
かつてはブルトレも発着していた長いホームに出入りするのはほとんどが2両か単行で寂しい限りですが、そこそこ頻繁には発着しているようです。
特急もご覧のようにライト感覚。長躯益田から到着した「スーパーまつかぜ4号」。
▲キハ126系 鳥取・島根両県のご支援により・・・・
一方こちらは快速、普通用のキハ126系(キハ121)。山陰本線高速化に対応するため鳥取・島根両県の資金援助を得て投入されました。JR西日本の地方線区でよく見られるケースですが、地域の交通がJRという民間企業に委ねられた今、沿線自治体による費用負担は前向きに評価されて良い施策だと思います。
◆若桜鉄道直通1333D
▲若桜鉄道直通の1333D 全通80周年ヘッドマーク付き
前置きが長くなりました。9:43発の若桜行に乗ります。
因美線から直通するこの列車は車両も若桜鉄道のWT3000形。若桜鉄道の列車はこの列車以外も多くが因美線に乗り入れます。県都鳥取直通は若桜鉄道が生き残るために最低限度必要なサービスといえるでしょう。
▲因美線との分岐駅郡家
鳥取を4・5人の乗客を乗せて発車。津ノ井、東郡家と進み分岐駅郡家(こおげ)で10分ほど停車。散歩がてら駅前に出てみます。
木造の駅舎は玄関付近に手を入れたあとが見られましたが、取って付けたような三角屋根が不釣合いです。
▲郡家駅で発車を待つ1333D
ここで若桜鉄道の乗車券を購入しようとしましたが、券売機も窓口も見当たらず。JRの窓口で尋ねると「証明書を取って車内で精算して・・・」とのこと。改札口横の発券機で乗車証明書を受け取りますが、かすれてほとんど判読不能でした。
▲雪見旅もクライマックス
10:07、わずかに3名の乗客と運転士、添乗員を乗せ郡家を発車。
すぐに八頭(やず)高校前に到着します。3セク転換後の新設駅で文字どおり県立八頭高校に接してホームが設けられています。八頭高校は甲子園に度々出場している野球の強豪校としても知られています。
車内には「通学定期運賃改訂」の社告が。なんと半額になっています。おそらく沿線自治体の補助が増額されたものと思われます。
▲突如現れた電気機関車
暖房の効いた車内でローカルムードを満喫していると突然車窓に古めかしい電気機関車が現れました。非電化の若桜鉄道になぜ電機が?
後で調べると北陸鉄道で使用されていたものを市民団体が譲り受け隼駅近くに留置しているとか。夏頃には客車も搬入し休憩施設にする構想があるそうです。
▲人形が迎える隼駅
その隼駅はスズキ製オートバイ「ハヤブサ」に通じるとしてオートバイ愛好家の聖地として人気を集めているとか。電機を譲り受けたのも「隼駅を守る会」という市民団体だそうです。さらには駅舎内では理髪店も営業しておりこの駅が多くの人々に支えられていることを物語ります。
ホームでは等身大の人形が出迎えてくれます。正確には案山子なんだそうですが、活き活きした表情を見ていると言葉が聞こえてきそうです。
▲安部駅には寅さんが
続く安部駅のホームにもこんな人形が。ちょっと考え事をしていたので一瞬ドキッとしました。
よく見ると寅さんですよね。実際この駅は寅さんシリーズのロケに使用されたそうです。 人形の背後には台詞らしき言葉が貼られています。
▲この谷の奥にはどんな町があるのか・・・
列車は谷の奥へと進んで行きます。雪に閉ざされたこの谷の奥にどんな町があるんだろう。そんな想像力を掻き立てずにはおかない風景に魅了されます。
いいですよ、若桜鉄道。
▲31年ぶりの若桜駅
終着若桜が近付くと添乗していた社員さんが集札に回ります。郡家駅の乗車証を示し若桜までの運賃を精算しようとすると「折り返されるんでしたら一日乗車券がお安くなりますが」と760円の全通80周年記念一日乗車券を勧められます。単純に往復すると840円ですから確かにお得。それに二つ折りの台紙にセットされた硬券も魅力的なので迷わず購入しましたが、鉄道側は80円のロスとなります。営業熱心と見るか、安易な安売りと見るか難しいところです。
▲人気者C12も雪の中
10:37、若桜駅に降り立ちます。
31年ぶりの若桜駅ですが、前回は5分の折り返しだったのでほとんど記憶がありません。当時キャンペーン中だった「いい旅チャレンジ20000キロ」の踏破証明用の写真を居合わせた地元の高校生に撮ってもらったことくらいです。
◆若桜駅にて
▲若桜駅舎兼若桜鉄道本社
でも、今日は幸いにして次の列車まで50分近く時間があります。
定石どおりなら駅に隣接する車庫を見学(入場料300円)というところですが、この雪では足場が悪く諦めます。圧縮空気で動くC12も雪をかぶって冬眠中です。
▲若桜の街並み
改札口を出ると若桜鉄道グッズコーナーがあったので冷やかします。記念乗車券・入場券、ストラップ、ハヤブサグッズなどが所狭しと並んでいます。
支援というわけではありませんが、私も珍しくピンバッジとストラップを購入しました。
先程の乗車券の借りを返さねば。
▲駅玄関から車両まで一直線 究極のバリアフリー
町に出ると車道は融雪道路なので雪はありませんが、その分歩道にはうず高く雪が。軽装なので散歩も断念。昼食調達に切り替えます。都合よく駅前にスーパーを発見。「TOSC」を名乗るこのスーパー。TOSCとはTOttori Seikatsu Centerの頭文字だそうです。「生活センター」ってかつての農協のスーパー。最近はAコープっていうんでしょうか。ちなみに若桜店の営業は18:30までです。
▲風情を感じる駅構内
駅舎内の図書コーナーでランチタイム。
この後は大阪まで小刻みな鈍行乗り継ぎで帰るため、ここで調達できねばお昼抜きになるところ。TOSCさまさまです。
▲人形に見送られ若桜駅を後に
11:25発鳥取行の発車が近付いたのでホームに入ります。
登録有形文化財の指定を受けているだけあってなんとも懐かしい風情が漂う若桜駅。ホームではもちろん人形たちが見送ってくれます。
▲WT3000形車内 シートを破ったのは誰だ
車両は往路と同じWT3000形ですが、今度は「さくら1号」です。(往路は4号)
シートの色も4号のグリーンに対して鮮やかなエンジ。ただし、いたずらによると思われる裂け目が気になります。
三々五々乗客が集まり10名ほどを乗せて発車。途中駅でも集客して約20名を乗せて郡家に到着します。往路と違って格段に活気付く車内にほっと一安心。若い人の利用が多いのも頼もしいところではあります。
▲郡家に到着した「さくら1号」
2009年、若桜鉄道は上下分離方式を採り入れ公設民営の形態で再スタートを切りました。地域の足は地域で守るという不退転の決意が窺えます。
私は今回わずかに1往復したに過ぎませんが、この鉄道が事業者、自治体、利用者の協力により活かされていると感じました。
私はローカル線の存廃はあくまでも地元の意思で決するべきと思っています。公金投入が不可避な問題に利害のない他所者が嘴を挟むべきではないと思うのです。無責任に存続を叫ぶべきではないと。よって昨今流行のサポーターとか応援団などという活動とは距離を置いています。地元で支え切れなくなった時点でその鉄道は命脈尽きたと見るべきです。個別の問題はありますが、徒に延命せず、早急に代替手段を講じるべきだと思います。
その点、若桜鉄道はローカル線のあるべき姿を示しているように感じました。今後も沿線の三位一体となった活性化策に注目したいと思います。
最後は少し硬い話になりましたが、若桜鉄道19.2キロ完乗です。
見覚えのある景色ばかりです(笑)
鳥取駅、無駄に広いだけ(失礼!)ですよね。
郊外のショッピングセンター(ジャ○コ)に人を取られてしまっています。実際に車で行きましたがそっちは活気にあふれていました…
隼という駅名に絡めて「はやぶさ」号の客車を…なんていう計画がありますね。
案山子、いろんな駅に設置されてますよね。癒されます^^
活性化どうなるんでしょうかねえ…SLに客車をつなげて本線走行という壮大な計画があるようですが…
by あーちゃん&父 (2011-04-04 19:11)
乗りつぶしルールは人それぞれですが、
私は一応、事業者が変わった場合には乗り直すようにしています。
若桜鉄道には乗りつぶし目的で一度乗ったことがあるだけで、
そのときはサットンさんの初回のように、すぐ折り返してしまいました。
じっくり見ると、木造駅舎が残る雰囲気の良い鉄道なのですね。
今度はゆっくりと再訪してみたくなりました。
by あおたけ (2011-04-04 19:57)
自分も3年前の夏に、若桜鉄道に乗りましたけど、それぞれの駅に
人形がいたのかどうかは、覚えがないですね。
それにしても、ヘッドマークの桜が、いい感じです。
by まるたろう (2011-04-04 20:24)
鳥取駅の高架化は昭和50年代に完成しました。松江駅や佐賀駅とどことなく構造が似ています。
いかにも機能重視の駅舎だという印象を受けました。
駅前が寂れているのは地方都市共通の悩みでして、佐賀でも小樽でも同様です。超高齢化が進行している中で、真剣に考えていかないと後で取り返しのつかないことになります。
若桜鉄道や青い森鉄道の上下分離の方針は今後のトレンドになるでしょうね。
by UZ (2011-04-04 23:05)
以前、米子へ餘部経由で行った際、鳥取を通過だけでした。
キハ126系(キハ121)に乗った時、
座れたけど、かなり混雑で疲れました・・・。
若桜鉄道に興味が湧きました・・・。
by 飛んでモアイ (2011-04-04 23:12)
「スーパーまつかぜ」かっこいいですね。
「さくら号」や人形がある駅も、いい雰囲気ですね。
by いそしぎ (2011-04-04 23:42)
あーちゃん&父さん
ご近所ネタ?お楽しみいただけたでしょうか。
鳥取駅、ずいぶん寂れた様子だったのが気になります。学生が動く平日はもっと活気があるんでしょうが。駅周辺も然り。イオンの巨大店舗に全部吸い取られたんでしょうか。
若桜鉄道。なかなか楽しめました。隼駅プロジェクトやSL運転も楽しみですが、地域密着の活性策が存続のカギになるでしょうね。
by サットン (2011-04-06 10:49)
あおたけさん
乗りつぶしのルール、自分の中でも固まってなくて。事業者が変われば白紙に戻すべきとは思うんですが、そうすると学生時代に荒稼ぎした国鉄分が全部消し飛んでしまうので悩むところです。
31年ぶりに再訪した若桜駅はなかなか味わい深かったですよ。昔懐かしいローカル線に出会えた気がしました。
by サットン (2011-04-06 10:56)
まるたろうさん
この人形、なかなか不思議な人形で、決してリアルじゃないんですが、なにかものを言いそうでハッとさせられます。
さくらのヘッドマーク、ブルトレのコピーには苦笑してしまいました。
by サットン (2011-04-06 11:06)
UZさん
ほぼ同時期に高架化された松江と鳥取ですが、私には鳥取駅のデザインが断然スマートに見えます。今どき架線のない高架駅も珍しいですし。
駅周辺も活気が感じられませんでした。富山市などで試行しているコンパクトシティについて真剣に取り組むべきでしょうね。
上下分離。インフラ部分まで鉄道会社に負担せよというのはあまりに酷ですもんね。
by サットン (2011-04-06 11:17)
飛んでモアイさん
キハ126、なぜか疲れる車両ですね。シートの形状が良くないというか・・・・。混んでいたらなおさらかと。
若桜鉄道に興味を持っていただけたとは嬉しいです。私も雪のない季節に再訪したいと思います。
by サットン (2011-04-06 11:36)
いそしぎさん
スーパーまつかぜ、シンプル過ぎるほどシンプルな車両ですが、お気に召していただけたでしょうか。
若桜鉄道の人形は他には見られない演出ですね。人間がいないので一層目立ちます。
by サットン (2011-04-06 11:48)
人の気配が乏しいローカル線に置かれた人形は活気を演出しているみたいです。房総半島を走る“いすみ鉄道”の国吉駅にも案山子やムーミンの人形がありました。若桜鉄道までのアクセスが鉄道、乗用車、バスであれ、多くの人々に乗車してもらえるよう期待しています。ED30は北陸鉄道鶴来駅の留置線で見たことがありました。
by 京葉帝都 (2011-04-06 16:04)
京葉帝都さん
この人形、生身の人がいないこともあってドキッとさせられます。夜間は少し怖いかもしれません。
最近バスツアーのコースにローカル線を組み込んでいるのをよく見かけます。若桜鉄道はツアーにぴったりだと思うんですが。鳥取自動車道が全通すればそうしたニーズも増えるかも知れませんね。智頭急には脅威ですが。
by サットン (2011-04-07 16:01)
茶色のレトロなEL、貴重なショットですね。
by takechan (2011-04-07 22:16)
takechanさん
私としては異例の反射速度で撮影しました。
様々な仕掛けがある若桜鉄道、気が抜けません。
by サットン (2011-04-09 12:22)