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新宮特急バスひとまず存続 [バスの旅]

最長路線バスも存廃の危機

「最長路線バス行方は?」、「水害で乗客減存廃協議」。6月6日付け読売新聞大阪本社版夕刊の紙面を見て驚かれた方も多いと思います。かく言う私も「えっ!あの新宮特急バスが!?」と半信半疑で記事を読み進めたのでありました。
新宮特急バスとは奈良交通が近鉄大和八木駅~JR新宮駅間で運行する路線バスで、走行距離約166kmは高速道路を経由しない路線バスとしては日本最長を誇ることからメディアにも度々取り上げられ、路線バスファン以外にも認知度の高いバスであります。私も2008年に全線乗車を敢行し、その魅力を当ブログ上で紹介させていただいております。(その模様は >>コチラ

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▲新宮特急バスの存廃問題を伝える読売新聞記事

読売の記事によると、この新宮特急バスが存廃危機に瀕しているとのこと。理由は今や日本全国の多くの路線バスに共通する過疎化による乗客減に加え、2011年の紀伊半島豪雨に伴う観光客の減少がひびいているとか。さらには円安による燃料費高騰が追い討ちをかけているそうです。強きを助け弱きを挫くアベノミクスとやらがこんな山間の路線バスをも蝕んでいるとは。

奈良交通によると2013年度の利用者数は5年前の7割まで落ち込み、国、奈良・和歌山両県からの補助金を受けてもなお年間1億円の赤字になるそうです。従来は奈良市周辺の優良路線の黒字で補えたものの、燃料費高騰で今年度は「全路線で赤字に転落」する見込みで、さらなる補助がなければ路線存続は不可能とのこと。仮に廃止ということになれば、この路線が南北に貫く日本一広い村奈良県十津川村は公共交通網から孤立し、自動車を運転できない交通弱者は事実上村内に閉じ込められることになってしまいます。最近よく耳にする「交通権」という言葉をあらためて認識させられる事態であります。

本件については読売が6月10日付け朝刊で続報を伝えており、結果としては沿線自治体が新たな補助を行なうことでひとまず現状どおり1日3往復体制での存続が決定したそうです。ただ、新たな補助の詳細については一切記述がありませんでした。期限を切ったものなのかどうかが特に気になるところではありますが。

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▲十津川温泉停車中の新宮特急バス (2008-9)


新宮特急バスの素顔

それでは今回の記事を踏まえつつ6年前に遡り新宮特急バスの印象を振り返ってみましょう。
私は新宮発の便に乗ったのですが、気になる利用状況は、行程の3分の1ほどを残した五条市内に入ったところで野外活動帰りの高校生の集団が乗車し、途中五条駅前まで補助席が埋まるほどの盛況を見せますが、この特需を除いては乗客は終始3~4名で地元客と観光客はほぼ1対1。素人目にも赤字とわかる状況でした。全区間乗り通したのはもちろん私一人でした。
さらに気に掛かるのがこの路線の効率の悪さです。1日に3往復が設定されていますが、往路、復路共に午前中の出発で所要時間6時間強というダイヤのため新宮行きの便は3便全てが乗務員、車両共に新宮で翌日まで滞泊するという間延びした運用となっています。
車両面でいうと特殊な路線だけに充当されるのは専用車両となっています。しかも年季の入った車両なので近い将来更新に要する費用負担を巡ってひと悶着起きないか心配ではあります。下手すると車両の老朽化を理由に廃止なんて最近のJRのような本末転倒した理屈がまかり通るかも知れません。

こう書くと新宮特急バスに将来はないかのように思えますが、決してそうではありません。沿線は観光資源の宝庫なのです。世界遺産熊野古道、十津川温泉、川湯温泉をはじめとする情緒豊かな温泉郷、生活道路に架かる吊り橋としては日本最高の高さを誇る谷瀬の吊り橋など手垢にまみれてないスポットが連なります。特に熊野古道は外国人観光客にも人気が広がっており、その取り込みができないものでしょうか。
加えてこの路線には「日本一」の冠が着いているのです。黙っていてもメディアがコンスタントに取り上げてくれる稀有な存在です。奈良交通も企画乗車券を発売するなど手を講じてはいますが、沿線自治体ともタッグを組み、さらなるPRに努めてもらいたいものです。このバスは「乗ることが目的になる」存在だと思います。

そうそう、車窓風景の中で印象に残っているのが沿線の随所で行なわれていた国道のバイパス工事です。高速道路を思わせるような高規格なものです。バイパスの建設費のわずか数パーセントの予算で公共交通を維持できるんですけどね。ド派手なバイパス建設と違って集票には結び付かないのでしょうけど。国土強靭化という名の土建屋政治でこの国が強くなるとは思えません。

今回、新宮特急バスはどうにか現状維持となりましたが、同時に存廃が検討されていた奈良交通の路線バス45系統のうち10系統の廃止、18系統の減便が決定したそうです。実は私が利用している京阪バスも昨秋、1時間当たり4本から3本に減便されてしまいました。もはや路線バスの維持は過疎地のみならず大都市圏でも困難になっています。地域の公共交通について真剣に考えないといけない時期に来ていると思います。蛭子、太川のご両名にもさらに頻度を上げて旅に出てもらわねばなりませんね。

3ヶ月ぶりの記事更新について

振り返り見ればなんと3ヶ月もの間記事更新をしないまま過ぎてしまっておりました。体調不良が理由です。この間スマホで管理ページだけは時々チェックしておりましたが、先日久し振りにPCでこのブログを覗いて見るとテッペンにはドカンと広告が貼り付けられておりました。ソネブロは一定期間更新をサボるとこういうペナルティが課せられるんですね。そろそろ何とかしなければ、と思っていたところに今回の新宮特急バスの記事に接したわけです。黙っていられなくなりました。
また、休刊中にも多くの皆さんのご来訪をいただいており、申し訳なく思っておりました。復活させようか、きちんと休刊しようか悶々としているうちに時間だけが過ぎてしまいました。ご勘弁下さい。
しばらくの間は今回のようなイッチョカミ的な記事をスローペースで更新していくことになるかと思います。同様に皆さんの記事へのコメントも再開できればと考えております。お邪魔した際には「あんた誰?」なんて言わずに構ってやっていただければ嬉しいです。

というわけで今回は日本一の長距離路線バスについて書きましたが、日本一があれば、日本で2番目もあるはずで次回はこの日本で2番目の路線バスを取り上げらればと思っております。


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コメント 11

お名前(必須)

サイト更新待ってました[exclamation]?こんな長距離バスあったんですね。驚きです。最初にこの路線を決めた人の想いを聴いてみたいもんです。
by お名前(必須) (2014-06-11 22:48) 

硬券屋

上のコメントはあっしです
by 硬券屋 (2014-06-11 22:51) 

まるたろう

久しぶりの更新、楽しみにしていましたが、体調を崩されていたのですね。
これからも、ご無理のないペースで続けていって下さい。

自分も新宮特急バス、一度は踏破しておきたいですと言いつつ、
もう何年も経っています。早く実現したいですね。
by まるたろう (2014-06-11 22:55) 

サットン

お名前(必須)こと硬券屋さん

記事更新長らくサボってしまい申し訳ありませんでした。
このバスは日本最長の路線バスとしてテレビにも度々取り上げられております。紀伊半島を南北に貫くため車窓は秘境ムードまんてんです。是非社用でご利用になってはいかがでしょう。開設当初は奈良市中心部まで乗り入れていたそうですよ。
by サットン (2014-06-12 11:25) 

サットン

まるたろうさん

早速のご来訪ありがとうございます。嬉しいです。
なにぶん病気持ちゆえグズグズしておりまして・・・・。KTRに乗りに行こうと思っていた冬は往き、GWは通り過ぎ、とうとう夏を迎えてしまいました。夏は乗り鉄の季節!なんとか完全復活できればと思っております。

新宮特急バスが危機に瀕しているとは迂闊なことに知りませんでした。車両の老朽化により廃止、なんてことにならないうちに是非お試し下さい。5千円強の運賃はちょっときついですが。
by サットン (2014-06-12 11:35) 

あおたけ

路線バスの「アノ番組」が放送されたにもかかわらず、
しばらく更新が無かったので、心配しておりました。。。
体調の方はいかがでしょうか?

存廃が取り沙汰されている、新宮特急バス。
紀伊半島は日本有数の豪雨地帯で、
運行条件の厳しさや乗務員にかかる負担などもあるでしょうが、
ぜひ存続してほしいものですね。。。
「日本一の長距離路線」というフレーズを活かして、
集客につなげられないものでしょうか。。。
by あおたけ (2014-06-12 12:42) 

サットン

あおたけさん

ご無沙汰しておりまして。薬との相性が合わずグズグズしておりました。
アノ番組・・・テレビ大阪ではとうとう1ヶ月遅れでの放送になってしまい、今や遅しと心待ちにしておりました。しまなみ海道を織り込んだ内容は良かったのですが、放送日のズレはなんとかならないもんかと。

新宮特急バス、確かに条件の厳しい路線です。皮肉なことに余所者から見ればその厳しさに眼を惹かれるわけでして。そこを逆手に取ってもっと集客できればいいですね。




by サットン (2014-06-12 19:14) 

京葉帝都

しばらくブログの更新がないのでサットンさんの容態を心配していました。今回の記事でほっとしました。このバス路線は乗ってみたいです。ゆっくりと山間部の車窓を楽しめそうなで。乗り通し客には記念品を贈呈するとかすればブレイクするかもしれません。
5月は1年ぶりに大阪へ行き、成行きながら、JR京都線、阪急京都線、環状線、阪和線、御堂筋線、四つ橋線に乗車して観察してきました。変化している光景を目の当たりにしました。
by 京葉帝都 (2014-06-13 12:44) 

サットン

京葉帝都さん

ご心配いただきありがとうございます! 長らくサボってしまい申し訳ありませんでした。
この路線の車窓は見事ですよ。幾重にも重なる山並み、様々に表情を変える十津川の流れ。6時間を決して長いとは感じませんでした。完乗証明書なんて発行するとインセンティヴになるかも知れませんね。是非ご体験下さい。
しばらく冬眠状態だった関西私鉄もようやく眼が覚めたようで、このところ新車投入も活発化していますので目が離せませんね。
by サットン (2014-06-13 18:12) 

やまびこ3

お久しぶりです。
この路線バス一度は乗ってみたいと思いつつ、果たせていません。
熊野古道の台風被害はほぼ回復されたのでしょうか。部分的にでも行ってみたいと思ってます。
さて、交通基本法は成立したものの、憲法でさえ保護にしかねない政権では何も動きがないのではないかと思ってしまいます。
ユアペースで記事を書いていただければ幸いです。
by やまびこ3 (2014-06-14 20:24) 

サットン

やまびこ3さん

長らくご無沙汰してしまい申し訳ありません。またお付き合い願えれば嬉しいです。
新宮特急、私も6年前に一度乗っただけですが、是非今度は季節を変えて楽しみたいと思っています。また違った風情を満喫できることと思います。途中下車して復活なった十津川温泉で1泊というのも良いかも知れませんね。
おっしゃるとおり、自国の憲法を姑息な手で捻じ曲げる政権にこの国を強くすることも、国民を豊かにすることもできないでしょうね。
by サットン (2014-06-15 11:03) 

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