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伊丹空港のホテルが復活 [ホテル(その他)]

「大阪空港ホテル」 3/25オープン!

大阪・伊丹空港ターミナルビル内にホテルが復活することになりました。その名もズバリ 「大阪空港ホテル」。2006年に閉店した阪急系の旧 「大阪エアポートホテル」の施設をリニューアルの上使用するようです。

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▲ターミナルビル内の告知広告

したがって、場所はターミナルビル中央ブロック、フロントは3階に位置します。大阪モノレール大阪空港駅からは連絡橋を渡り、左手のターミナルビル入り口入ってすぐのエレベータで1フロア上がったところ。さすがにアクセスは抜群です。
施設構成は完全に宿泊に特化しておりレストランなどは付帯していません。ターミナルビル内の店舗をご利用下さいとのこと。もっともですが、21時の門限付きの伊丹空港、夜遅くチェックインすると食料難民になりそうですのでご注意を。
ちなみに客室料金はシングルが¥6500~(ネット割引、税・サ込み)。
運営はどうやら大阪国際空港ターミナル㈱が直接当たるようです。客室だけですからね。
なお、客室から滑走路は見えないそうなので念のため・・・・・。

詳しくは同ホテルWEBサイトへ
http://www.osaka-airterminal-hotel.com/index.html


蛇足ながら・・・・・

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▲がんばろう!JAL!

ヒコーキに乗る予定もない私が伊丹に出かけたのは他でもありません。ANAのモヒカンジェットを見るためです。ANAのサイトによるとこの日は羽田から伊丹に14:05着、15:00に羽田に戻るスケジュール。ところが、急な機材変更が発生したのかやって来たのは普通のB767、チクショー!
というわけでJALの画像をアップしておきます(笑)

リベンジ!モヒカンジェットの模様は >>>コチラ

ところで送迎デッキからターミナルを見るとある異変に気付きました。あるべきものがない! ターミナルビルのシンボルともいうべきものがない! そう、旧管制塔がなくなっています。2001年に新管制塔が稼動した後もビルのテッペンに残っていた旧管制塔。一時は公開するという話も出ていましたが、ひっそりと姿を消したようですね。


さて、10日振りの更新となりました。このところパソコンもニンゲンも経年劣化が激しく動作不良が頻発しております。したがって、更新のみならずいただいたコメントへの回答も大変遅れてしまいました。ご容赦下さい。


ホテル屋が見た1.17 [ホテル(その他)]

震災15年目の備忘録

阪神大震災の発生から15年。あの未曾有の大惨事も日を追うごとに記憶が風化していく。私はホテルという社会の縮図を通して震災を見るという経験をすることとなった。ちょっと違った視点から見た震災の様子を書き留めておきたいと思う。


◆1.17

7年余の東京転勤生活を終え大阪に戻りちょうど1年、年末年始の繁忙期も一息つき宿泊部門に所属していた私は数日後にチェックインする手配事項の込み入った団体の受け入れ準備に奔走していた。1月16日も終電に近い電車で豊中市内の自宅に戻り眠りに就いていた。
夜も明けやらぬ頃突然襲った激震が何であるか寝ぼけた頭は理解できず、怪獣がマンションを揺さぶっているのかと本気で思ったほどだ。台所で食器類が激しく割れる音でようやく目が覚めた。地震だ!
なんとか上半身だけ起こし照明をつけようとするが反応しない。とにかく情報をと枕もとのラジカセに手を伸ばすが当然電源は入らない。停電しているのだ。家内は子供を庇おうと寝返りをうった。次の瞬間寝ていたところに本棚が倒れてきた。
やっと揺れがおさまったときに考えたことは「東海地方は大丈夫だろうか?」。この時はまさか震源が淡路島付近だとは思ってもおらず、てっきり東海地震が発生したものと思っていた。


◆出社できず

近所に住む祖母のことが気になり自転車で向かう。倒壊した塀、水道管が破損し水が湧き出す道路にただならぬ事態を認識する。祖母が住む家も1階がかなり損傷しており扉の開閉が思うに任せない。とりあえず無事を確認し阪急服部駅に向かう。運転状況を確認するためだ。案の定「運転見合わせ」とのこと。困った、先述した団体の手配書をまとめて今日中に関連部署に通知しなければならない。なんとしても出勤しなければ。
なんとか会社に連絡を取りたいが、電話も不通である。あちこちの公衆電話を試すが何れも通じない。諦めて自宅に戻るとなんとマンション1階のローソンの公衆電話が使えるという。行列に並びやっとのことで連絡を取ると件の団体は交通途絶により早々とキャンセルになったとのこと。とりあえずほっと一息。電車は不通、バスも淀川に架かる橋の点検が済むまで大阪市内には入れないとのことで致し方なく出社は諦める。
台所に散乱する食器の破片を片付けながら電気の復旧を受けテレビを見て事態の重大性をあらためて認識する。被害の中心が神戸だということも。倒壊した阪神高速を見て愕然とする。


◆混乱する予約センター

翌18日は阪急宝塚線が間引きダイヤながらも復旧し出社する。電車も傷だらけである。
昨日出社したスタッフに状況を聞くと宿泊予約センターはPCのモニター類がことごとく転倒し、床にはファイルが散乱、足の踏み場もなかったとのこと。宴会場やレストランは什器類や酒類の瓶が損壊、シャンデリアも一部が落下するなど営業できる状態ではないという。もちろん直近の予約はほとんどキャンセルとなった。
宿泊部門も被害は大きく数百ある客室の内何室が使用可能か把握できてないという。エレベータも停止したままで点検待ち。目も耳もふさがれた状態である。
そんな中電話の嵐が押し寄せて来た。住宅を失った人たちがとりあえずホテルに身を寄せようと考え始めたようだ。その数たるや凄まじく代表電話経由5回線、直通回線1回線、フリーダイヤル1回線が常に塞がっている状態が延々と続いた。こちらも状況を把握できておらず受けるに受けられない。そんな中「○○産業の○○や、何時もの部屋用意しておいてくれ!家族も行くから隣にもう一部屋頼む」。常連さんからの電話だった。状況を説明し時間をくれるよう説明するも「ごちゃごちゃ言うな!こういうときに用意するのが顧客に対するサービスやろ!とにかくこれから行くぞ!」と言って電話は切れた。この手の電話には手を焼かされた。追い詰められたときこそ人間の本性が出るというが、この手の人物が社会にそれなりの地位を占めているとは。暗澹たる気持ちになった。
ただ、大部分の電話は悲痛なものだった。「とにかくシャワーだけでも使わせて欲しい」、「階段でも良いので雨風気にせず休む場所を貸して欲しい」等々。


◆ホテルはどう対応したか

こうした要望に応えるべくまず現状把握が急務となった。客室の被災状況の調査を技術スタッフが不眠不休で行い、使用可能な客室のナンバーがフロント経由で逐次報告されてくる。予約センターのホワイトボードにそのナンバーが転記され予約を受け次第ナンバーをアサイン(割り振り)、ボードから消していく。まるで株か為替のディーリングルームのような様相だった。これが原始的ながら最も手堅い方法である。ちなみに普段はナンバーを割り振るのは基本的にはチェックイン時のフロントの業務である。全ての予約をプレアサイン(事前に割り振る)などというのは正に異例の事態だった。
ひととおり客室のチェックを終えると無傷の部屋に加え宿泊には支障はないが壁面に亀裂があるなどいわゆる故障部屋も販売対象に回された。
どうにか受け入れ態勢が整い続いて被災者支援策を打ち出した。主なものは次のとおり。ただし、一部記憶が定かでない部分があるがご了承願いたい。

①被災者特別料金の設定
被災者からの予約については部屋タイプお任せで大幅割引料金で提供。故障部屋については納得いただいた上でさらに割引。

②グループホテルの斡旋
もちろん大阪のホテルだけでは受けきれず近畿圏に展開する系列ホテルに斡旋を行った。もちろん特別料金を適用し、予約の円滑化を図るため各ホテルから大阪で販売可能な客室を一定数提供を受ける。

③シャワーの開放
せめてシャワーだけでも使ってもらおうと一部客室のバスルームを開放した。混乱を防ぐため公表するのは控えていたように思う。

④被災地への炊き出し
先述したように直近の宴会はことごとくキャンセルとなったため食材は大量にあり、コックの手も余っている。ということで被災地での炊き出しを実施した。ただし、この策については完全に外資系ホテルの後塵を拝することとなる。在阪外資系ホテルの対応は早かった。得意のPR術に加え、民族系ホテルが今も水商売感覚から抜け切れていない体質によるものである。とにかくCSRに対する意識が違うのだ。


◆全国から集まる支援の手

被災者からの予約ラッシュが一段落すると次の仕事が待っていた。壊滅した神戸のライフラインを復旧すべく全国から派遣されてくる電力、ガス会社のスタッフのハンドリングだった。
どういう経緯によるものかこの仕事は大阪市内のある旅行代理店が一手に握っていた。渡された資料には北海道電力をはじめ電力各社、東京ガス、東邦ガスなどの都市ガス各社の名前が列挙されている。ただ、最終的な人数、氏名などは土壇場まで不明という出たとこ勝負でフロントはずいぶん苦労していたことを思い出す。
連日作業を終え戻って来る彼らはヘルメットに安全靴という出で立ちである。ロビーは華やかなホテルの館内というより野戦司令部という趣だった。


◆フロントナイトチーム奮戦す

このように全て異例尽くめの被災後のオペレーションだったが、特に過酷な勤務を余儀なくされたのはフロントと館内のメンテナンスを担当する技術スタッフだった。中でもフロントナイトチーム(夜勤)は7時に出勤してくる日勤チームへの引継ぎを目前にしての地震発生だっただけに疲労も激しかった。さらには引き継ぐべき日勤のスタッフが出勤できないためノンストップで走り続けざるを得なかった。
加えて幹部も多くが交通再開まで出勤できず、また多くは連絡もつかなかったため指揮命令系統を確立できず現場の判断で動かざるを得なかった。結局ナイトチームが引き上げたのは被災翌日の夜だったと記憶している。勤務に就いて50数時間不眠不休で奔走していたことになる。


◆足取りも重く・・・・・

幸い私は毎日帰宅することができたが、その足取りは重かった。
阪急梅田駅の改札口からは土埃にまみれた電力、ガス会社のエンジニアたちが疲れ切った表情で降りて来る。ユニフォームには馴染みのないロゴが付いている。
そして、神戸線ホームにはポリタンクとブルーシートを抱えた被災者と思しき人々が列をなして上がっていく。被災地で手に入らないものを大阪まで買出しに来ていたのだろう。
毎日こうした光景を見ながら帰宅するのは辛いものだった。
自分の仕事が落ち着いたら何かのボランティアに参加しようとも考えていた。しかし、果たせぬまま、いや果たさぬまま15年が経過してしまった。

大阪・茶屋町のホテル計画その後 [ホテル(その他)]

チャスカ茶屋町と申します

本年2月9日に「どうなる茶屋町のホテルプロジェクト」でお伝えした大阪・茶屋町に建設中のホテルの正体が見えてきましたのでご紹介いたしましょう。

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▲西側立面

場所は阪急梅田駅の東側、新御堂筋沿いにLOFTに隣接して建設中です。地上23階建、世界の安藤忠雄氏の設計によるもの。
現在本体工事はほぼ終えているようです。当初の施主であるディベロッパー「アーバンコーポレイション」が経営破綻したため去就が危ぶまれていましたが、メリルリンチ傘下のファンドの手に移り工事が継続されたようです。
手前の敷地では長らく放置されていた阪急を中心とした茶屋町東地区再開発が本格化しはじめました。平成23年に完成すると31階建のタワーマンションを中心にした複合施設となります。

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▲ビルの名は「CHASKA茶屋町」

ホテルの他、商業施設、結婚式場、サービスアパートメントで構成され「CHASKA茶屋町」と名称が決まったようです。どことなく北欧系の響きですが、CHASKAの由来は “茶屋町で茶でもすっか” をもじっているとの説を聞きましたが、真偽の程は定かではありません。告知では来年春グランドオープンと謳っています。
CHASKA茶屋町HP http://home.f03.itscom.net/ish/chaska.pdf

※名前の由来は CHA:茶屋町 S:住む K:買う A:遊ぶ とのこと。

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▲既にロゴも掲出されています

低層部には「回遊デッキ」と名づけられた回廊が巡らされウインドウショッピングを演出します。
さて、数ヵ月後にグランドオープンとのことですが、ホテル部分をどこが運営するのか全く不明です。建物を一回りしてもなんら情報なし。ブライダルの予約などを考えるとこの時点で開業告知もなされていないのは致命的ともいえます。普通なら阪急電車からよく見える西側に懸垂幕を設けるなどの開業告知を行っているはずですが。

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▲鋭角的な南側立面


◆ホテルの名は アルモニーアンブラッセウエディングホテル

ネットなどで情報を集めると運営主体のHPが見つかりました。
その名も 「アルモニーアンブラッセウエディングホテル」。http://www.he-wedding.jp/
来年4月オープンとのことですが、恥ずかしながらホテル屋も存じません。
運営する㈱ブライズワードは名古屋に本社を置き、岐阜県、長野県を中心にホテル、結婚式場を展開している新興の業者のようです。ホテルとは言いながらいずれもブライダル機能が中心で客室は僅かです。 “ホテルウエディング” を名乗るためにいちおう客室を付帯しホテルの体裁をとっているようにみえます。

一応ブランドは確認できましたが、謎はまだ残ります。
・4月開業を予定しながらHPには宿泊に関する情報が今現在も皆無である。
・概ね11~22階部分が客室になるようだが、同社にはこれだけの規模の都市型ホテルの運営実績がない。
・サービスアパートメントとの棲み分けが明らかでない。
・PRが不自然なほど消極的である。

前述したように複雑な生い立ちのCHASKA茶屋町だけに一層謎めいて見えるのは私だけでしょうか。
ともかく梅田駅至近に久しぶりに誕生するホテルです。今後も成り行きを注目したいと思います。


ホテル・旅館から電話、その時あなたは・・・ [ホテル(その他)]

親切か大きなお世話か?

前記事から続きます・・・・・

先日の旅行から帰宅すると留守番電話に宿泊した旅館から「忘れ物がありました・・・」とのメッセージが残されていた。親切だなと思った次の瞬間、「ちょっとやばいんじゃないか」という思いがよぎった。

それというのも私の勤務するホテルでは遺失物があったとしても決してこちらから連絡を取ることはしない。遺失物は然るべく保管しておきゲストからの連絡を待つのである。
理由は簡単、いろいろなシチュエーションでの利用が考えられるからである。中には道ならぬ関係での利用もあるだろう。そんなところへホテルから遺失物の電話を入れようものなら大騒ぎになってしまうのは必然である。場合によっては電話一本で家庭崩壊ということも大袈裟ではなく起こりうる話である。
なにもそんなにドロドロした状況だけではない。たまには会社や家族から離れ一人で気分転換したいという利用もけっこうあるのだ。

私の苦い経験を披露すると・・・・・・

かような理由で当ホテルでは通常予約確認の電話は入れない決まりになっている。ただし、混雑する年末年始の予約についてはキャンセル待ちも多いことから秋頃より確認の電話を入れることにしている。そんな確認作業を行っていたある日、若手の予約クラークから「お客様ご立腹なんで電話を代わってください」と泣きつかれた。電話を代わり先方の言い分を聞いているとやはりお正月を家族と離れてのんびり過ごす予定にしていたのにホテルから電話があったため家族の知るところとなり気まずくなってしまったという内容だった。日頃大家族で生活しているので年に一度くらい一人でのんびりしたいという気持ちは理解できる。もちろん予約受注時に日が迫れば確認電話を入れる旨断わってはいるものの説明不足だったのだろうか。それともゲストが忘れていたのか。

それほどまでにホテルはプライバシーを尊重しているのだが。

まあ、今回の私の場合は何も後ろめたい利用ではなかったので何本電話があろうと平気だが時と場合によってはエライことになっていたかも知れない(笑)

さあ、あなたはホテルや旅館からの電話をどう思われるだろうか?
タグ:ホテル 旅行

続 知られざる奈良のホテル事情 [ホテル(その他)]

◆はじめに
この記事の前編にあたる「知られざる奈良のホテル事情」をアップしたのが昨年2月16日。ほとんど文字ばかりのお堅い内容にも関わらず今もコンスタントにアクセスをいただいてるのには私も驚いている次第である。みなさん余程奈良での宿泊をめぐって疑問、不満をお持ちのようである。こうなってはみなさんのご期待、ご要望(笑)にお応えせねばなるまい、と多分に不遜な書き出しになってしまったがお許し願いたい。
前編では「奈良という町はホスピタリティに欠けている」、「あり余る観光資源の上にあぐらをかいている」と指摘し「まかりとおる殿様商売」と表現したが、奈良ではこういうケースを“大仏商法”と呼んでいるようだ。
そんな奈良がこのところ脚光を浴びている様子である。来年に開幕を控えた平城遷都1300年祭とそのキャラクターに祀り上げられてしまった「せんとくん」が話題の中心である。「せんとくん」なんてそもそもそのデザインの醜悪さから県内で大ブーイングを巻き起こした張本人ではないか。それが何かの拍子にキモカワイイということになり「ひこにゃん」に迫るゆるキャラの成功例ににのし上がってしまったのである。良い話のない奈良の観光業界にとってはまさにヒョウタンからコマである。しかし、そんなことに浮かれていられないのが世界的観光都市奈良の現実なのだ。
前編で取り上げた奈良県、奈良市双方による泥縄式のホテル誘致が私も予想しなかった悲惨な状況に陥っているのである。

◆奈良市のホテル誘致は泥沼の失敗劇
前編で紹介したとおり奈良市はJR奈良駅西口の再開発用地にホテルを誘致、結果コートヤード・バイ・マリオットの進出が決まった。297室の宿泊特化型ホテルだという。ところが、事業主である新興マンションメーカー㈱ゼファーが昨年8月に経営破綻してしまう。慌てて奈良市長は同社トップに事業の継続を直訴し会社側も「ホテルは思い入れのある事業であり継続したい」と回答していたが、思い入れで事業など継続できるはずもなく撤退。1300年祭を控え焦る奈良市は地元不動産業者などが出資するJR奈良駅前ホテル開発㈱に事業継続を託すも資金調達に手間取るなどして1300年祭開幕までに開業させることは不可能と判断、結局このホテル誘致事業は白紙撤回となってしまった。

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JR奈良駅前のマリオット進出予定地だった土地 駅前広場を挟んで反対側(画像手前)には同じく市が誘致したホテル日航奈良が立地している。

実は市によるホテル誘致には3社が手を挙げており次点にはベストウエスタンを看板にした案が選ばれたそうだが、今さら1位案が破綻したので次お願いしますといえる種類のものではないだろう。

そもそもこのホテル誘致には不可解な点がある。対象となる土地は本来百貨店を誘致する予定だったが、進出企業がなく遊休地化していたものをホテル用地に転換したのだ。元々のホテル用地には既にホテル日航奈良(元三井ガーデンホテル奈良)が進出しており空いていたからともう1軒ホテルを持ってこようという発想自体お粗末である。この泥縄式のホテル誘致にホテル日航は「ホテルが増え観光地として魅力がアップすれば良い」と寛大なコメントをしていたが白紙撤回となり内心ほっとしているのではないだろうか。

このホテル騒動が奈良市に与えた影響は大きく市議会が紛糾、この案件が市長と担当政策監(なんだこの役職)の意向のみで進められたとして藤原市長は責任を認め次期出馬を断念している。なにやら安宅産業崩壊劇の内幕を見ているようなさむーい話である。

◆県のホテル誘致も事実上頓挫
市に一歩遅れて奈良県もホテル誘致を展開していたが、こちらは幸か不幸か早期に暗礁に乗り上げているようだ。近鉄新大宮駅近くの県営プール敷地を利用者の反対を押し切り提供したものの何と進出希望は1社のみ。しかも、その企業が資金計画に問題ありということで不適格のレッテルを張られてしまったのだ。市のように泥沼に嵌る前にストップがかかったのは幸運だったかもしれない。
進出企業の再募集を行ったところ折からの不況もあって手を挙げる企業はゼロ。もはや県の意図する1300年祭に間に合うはずもない。事実上お蔵入りと考えてよいのではなかろうか。

このホテル誘致の旗を振った荒木知事は「国賓クラスにも対応できる“外資系”が良い」などと逆指名ともいえる発言をしていたが、現実は思ったより厳しかったようだ。この県知事さん、ホテルに関してはずぶの素人かと思っていたが、なんと元運輸省観光部長!つまりホテル業の元締めでいらっしゃったとのこと。たいへん失礼な思い違いをしてしまったが、中央官庁がいかに現実から遠い所で仕事をしているかを物語る話である。
冬柴前国交相が伊丹空港廃止論をぶち上げた橋下大阪府知事に「素人が口を挟むな」という主旨の発言をしていたが、こうしてみると国交省のお役人たちの方がよほど素人ではないか。

このケースも市の場合と同様自治体の安易なホテル誘致策が気になるところ。用地選定にしても他に空いている土地がなかったので古くなった県営プールをぶっ壊して提供しようという適当なお役所仕事が見え隠れする話である。荒木知事はせんとくんと一緒にはしゃいでいる場合ではないだろう。

◆地に足のついたホテル誘致を
今回のお粗末なホテル誘致失敗劇に共通しているのは遷都1300年祭という一過性のイベントに間に合わせるために拙速な誘致を進めてしまったことである。なぜ世界に冠たる奈良ともあろうものがもっと腰を据えた観光インフラの整備ができないのだろうか。前編で書いたとおり奈良県の宿泊施設整備状況は信じられないことに47都道府県で最低レベルである。観光業の中でも最も経済波及効果の大きい宿泊業の整備は急務である。しかし、今回のように失敗を連発していては元も子もない。優れた立地条件が成功のポイントといわれるホテル業において県・市のようにおざなりな用地選定を行っていたのでは誘致には成功してもその後の運営ではおそらく苦戦を強いられていただろう。たかが一過性のお祭り騒ぎに振り回されるべきではない。かつての「ならシルクロード博が」何を残してくれたのか。そんなことがあったことすら忘れられているのではないだろうか。 


「ホテル金沢」でランチ [ホテル(その他)]

期待の新ホテルでしたが

先日の北陸の旅の帰途、金沢で一旦下車しランチをとることにした。場所は駅前に昨年の5月にオープンしたばかりの「ホテル金沢」である。このホテルについてはオープン前の昨年2月に書いた「古都金沢のホテル事情」で金沢ホテル戦争の先鞭をつける地元資本の代表格として取り上げている。記事にした手前オープン後の様子を確認すべく立ち寄ったのだが・・・・・

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▲駅前広場に面して建つ「ホテル金沢」

ここでホテル金沢に関しておさらいをしておこう。前身は駅前の「ホリデイイン金沢」でホリデイインとのFC契約解除後「ホテルイン金沢」として営業していた。駅前の一等地に立地していたのでご存じの方も多いことと思う。その後いったん営業を休止し全面的に改築し、名称も「ホテル金沢」に改め宿泊、料飲、宴会部門を揃えた都市型ホテルとして昨年5月にオープンしている。
駅前広場を挟み「ANAクラウンプラザホテル金沢」と対峙して建つ16階建の茶色の建物は貫録も十分で地元資本代表に相応しい佇まいを見せている。

京都行の高速バスが出るまでの間ランチをとりながら様子を見ようとホテルに向かった。駅前広場に面してレストランが配置されておりサブエントランスも設けられている。私もそこから館内に入るが、人影がない。時間は14時過ぎとアイドルタイムではあるが、喫茶利用のゲストがもう少しいても不思議ではないはずだ。実際、金沢駅や隣接するイオン系ファッションビル「フォーラス」は結構な人出で賑わいを見せている。
レストランの入り口に近づくと私の気配に気づいた女性スタッフが慌てて迎えてくれた。

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▲コーヒーショップ「ピコ」

「軽く食事をとりたいんですが」。
「はい、洋食でしたらご用意できますよ」。

どうやら一つの料飲店舗がコーナー別にコーヒーハウス、和食、寿司に分けられているようだ。ということでコーヒーショップ「ピコ」のテーブルに案内される。他にゲストの気配は感じられない。

そこへ女性スタッフがメニューを差し出す。なんとラミネートパックしただけの下敷きのような仕様である。街場の喫茶店でももう少ししっかりしたメニューを用意していると思うが。
中身を見てまたびっくり!安い!!ライスもので概ね800円。昨夜利用した「ANAクラウンプラザホテル富山」の一件があるだけに驚きも一層。シーフードピラフをオーダーする。
加えて食後のコーヒーも頼んでおこうと値段を見ると高い!!450円とある。ピラフの半分以上という値段設定はいかがなものか。メニュー全体の値段設定のバランスが取れていないと感じる。

ややあって男性スタッフがピラフをサーブしてくれたが、なにか変だ!
器はシーフードをイメージしたのか貝殻を模した深皿だが、それがテーブルクロスもかかっていないテーブルにドンと置かれる。非常に安っぽい状態ではないか!
ちなみにテーブルは木目調の樹脂?が張られた高級感のかけらもないもの。クロスを掛けないならせめてペーパーマットでも敷けばどうか。それもだめなら下皿をセットするとか。間抜けなテーブル上の光景である。

料理の方はボリュームもあり、シーフードもホタテ、アサリ、イカ、タコ、小エビなどが豊富に入っている。味も悪くないが、食べているうちに違和感を覚え始めた。「これはピラフなのか?」。「ひょっとしてチャーハンではないのか?」。まさかシーフードピラフ=海鮮炒飯と誤解してはいないと思うが、答えは確認していない。

食べ終わると待つほどもなくスタッフが現れ皿を下げ「コーヒーをお持ちいたします」。
今回のようなゲストが無人に近いレストランではスタッフの気が緩んでしまい放置されてしまうことがよくあるが、ここは杞憂に終わった。すぐに小ぶりなカップのコーヒーが用意され「どうぞごゆっくりお召し上がり下さい」と慇懃に一礼する。

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▲コーヒー 450円也

コーヒーを飲みながらあらためて店内を見渡す。
視界にゲストの姿は見えないが、声だけはひそひそと聞こえてくる。かなり入り組んだレイアウトなのか。
やはり、ホテルのレストランに期待する高級感も洒落たムードもない。テーブルが整然と並び、照明も特に工夫は見られず。サッシで仕切られた個室もあるがアルミむき出しの桟が武骨である。
要は華やぎを演出しようという意図が全く感じられない。ホテルで飲食しようという利用者のニーズをくみ取れていないのではないか。駅構内でもファッションビル内でもなく敢えてホテルで食事をという場合なんらかのハレの場を求めるはずだが、ここにはハレが用意されていない。

などなど考えながらコーヒーを飲み終わりキャッシャーで支払いを済ませる。

ぐるりとロビー周りを見てまわる。サブエントランス付近にもちょっとしたシッティングスペースがあり正面にはずらりと国旗が並んでいる。なんとも奇異な眺めである。なぜロビーの壁面に国旗が並んでいるのか?国旗を飾り物と勘違いしていないか。ホテルが国旗を掲揚しているのはプロトコールに則った意味を持つのだが。
その隣にフロントカウンターがあり女性スタッフが一人。ここにもゲストの姿はない。液晶ディスプレイの宴会一覧には多くの席名が並んでいるのだが。

メインエントランスを出ると目の前は「金沢都ホテル」だった。

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▲左から 金沢都ホテル、ホテル日航金沢、ANAクラウンプラザホテル金沢

実は今回出かける前にこのホテルのHPを見て若干の不安を感じていた。コンテンツが実にシンプルなのだ。メニューなど必要な情報すら得ることができない。画像も小さく見難い。アピールするものが感じられない。その不安が的中してしまった。

ハードにソフトが付いて行けていない、とは最近よく聞くホテル屋にとっても耳の痛い話であるが、ホテル金沢はその逆、ハードがソフトに負けているのだ。スタッフに対してはなんら不満は感じなかった。出会った全てのスタッフは例外なく「いらっしゃいませ」、「ありがとうございました」ときちんと声掛けをしてくれた。せっかくのスタッフが演じるステージがお粗末としか言いようがない。
ゲストのためのステージ、スタッフのためのステージを用意して欲しい。それほど費用をかけることなく、ちょっとした工夫で実現できると思うのだが。
かつての駅前ホテルから金沢トップクラスのホテルを目指してほしい。

ホテル金沢 http://www.hotelkanazawa.co.jp/index.html

どうなる大阪茶屋町のホテルプロジェクト [ホテル(その他)]

安藤忠雄設計のホテルの行方は

大阪梅田に隣接する新御堂筋沿いであるビルの工事が進んでいる。
元大阪東急ホテルがあった場所。2006年3月末をもって同ホテルは東急ホテルチェーンの再編成に伴い閉館、その跡地が「アーバン茶屋町プロジェクト」として再開発されているのだ。

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▲新御堂筋西側に位置する

このプロジェクトはその名のとおり、㈱アーバンコーポレイションによって進められていたのだが、ご存知のとおり同社は昨年不動産バブルが吹っ飛びあえなく経営破綻。工事も中止かと思われたが現地に行ってみると継続されていた。

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▲アーバン茶屋町プロジェクト完成予想図

計画によるとこのビルは地上23階、地下2階の構造で低層部に商業施設、中層部には住居が、そして10階~23階をホテルが占めることになっている。オープン予定は平成21年6月と発表されている。
詳細は同社HP http://www.urban.co.jp/news_contents.html?id=711

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▲阪急梅田駅側から

工事は継続されているもののオープンは当初予定よりは大幅に遅れるものと推測される。ご覧のようにまだ棟上げすら終わっていない様子である。これで今年6月オープンは誰が見ても不可能だろう。

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▲設計は安藤忠雄建築研究所

ホテル屋としてはこのホテル部分にどこのホテルがかんで来るのか興味津津だが、残念ながら今のところ情報はない。逆にどなたかご存知の方がいらっしゃればご教示願いたい。

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▲プロジェクト名も変わらず

施工が鹿島なのでその線からたどると東京・東陽町のホテルイースト21を運営する鹿島東京開発㈱に行き当たるが、チェーン展開には興味はなさそうにみえる。かつて、大阪ビジネスパーク内の鹿島所有地に2号店を出店する意向が新聞でも報じられたが、東京の業績が思わしくなく沙汰やみに。該当する土地には現在ホテルモントレラ・スール大阪が建っている。ちなみに同ホテルが入居するマルイトOBPビルのオフィス部分には鹿島のオフィスが入っている。

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▲ここで暮らす人々の豊かさのためにか・・・・

果たしてどこがオペレーターになるのか興味深いところだが、現下の情勢ではなかなか手を挙げるところはないだろう。

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▲夢いっぱいのイラストが飾る

現在の進捗状況からみると規模縮小ということも考えられるのだろうか。

周囲にはロフト、MBS(毎日放送)、茶屋町アプローズなどが立地しなかなかおもしろそうな土地ではあるが、周囲に再開発用地を抱えている阪急も具体的な動きを見せておらず環境の好転は難しそうだ。
新御堂筋を挟んで事務所を構える安藤氏も頭を抱えているのかも。

※この記事は筆者の推測によるものです。その点をご了承いただいたうえでお読みください。

その後の様子は >>>こちら

ザ・ウインザーホテル洞爺というホテル [ホテル(その他)]

ウィンザーホテル洞爺夢のホテル (小学館文庫 く 4-1)

ウィンザーホテル洞爺夢のホテル (小学館文庫 く 4-1)

  • 作者: 窪山 哲雄
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2008/05/08
  • メディア: 文庫

洞爺湖サミットの会場となったザ・ウインザーホテル洞爺、連日すごい露出ですな。広告費換算でいったい如何ほどになるのか見当もつきません。
それではザ・ウインザーホテル洞爺とはいかなるホテルなのか?それを紐解くにはこの本が一番でしょう。

■ホテリエのいるホテル
ホテリエ(hotelier)とは単にホテルで働く人ではなく、ホテル経営者を指すのでありますが、それも単に数字だけを見ている人ではなく、ホテルを、その土地を知り尽くしている人にこそ冠せられる言葉であろうと私は理解しております。
そういう意味ではこの本の著者で、株式会社ザ・ウインザーホテルインターナショナル社長の窪山哲雄氏こそわが国では希少なホテリエでありましょう。金融業や電鉄業から天下りしたホテル経営者は数多いらっしゃるが、ホテリエといえる人がこの国に何人いるでしょう?

窪山氏はニューヨークの名門”ウオルドルフ・アストリア”他、内外のホテルの要職を歴任した純粋なホテリエであります。氏の名を一躍有名にしたのはハウステンボスのホテルを経営する”NHVホテルズインターナショナル”社長時に成し遂げた数多くの奇跡とも言える偉業でしょう。”ホテルヨーロッパ”を開業1年でLeading Hotels of the World(LHW)に加盟させると同時に客室単価日本一の高級リゾートホテルに育て上げたというのは象徴的な一例です。
その時の部下が氏を慕い長崎から洞爺まで何人も付いて来たといいます。現在の総支配人もそのお一人だそうですよ。

■ドラマチックなホテル
このホテル、実はこれまで順風満帆でやって来たわけではなく、波乱に満ちた歴史を持つのであります。
1993年、ホテルエイペックス洞爺の名で開業したこのホテルには600億円余りの巨費が投じられたそうです。
この当時、広報を担当していた私は、たまたまこのホテルの内見会から帰って来たばかりの業界誌の幹部であるA氏とお会いする機会がありました。その時のA氏の興奮した表情を今もはっきりと覚えております。「サットンさん、エイペックスって凄いホテルだよ!金懸けてるよ。それにスタッフの笑顔が素晴らしいね!先日お邪魔したお宅のホテルのスタッフ、ちょっと疲れてたけど・・・・・」。
なにごとも歯に衣着せずに意見するA氏の言葉だけに説得力がありました。ウチのホテルに対するコメントも的を得ていましたが・・・・。

そのエイペックスも巨額の投資が裏目に出て、融資元の北海道拓殖銀行の破綻に巻きこまれていきます。洞爺湖を見下ろすように立つその姿はバブルの塔として一時期頻繁にマスコミに登場したので今でもザ・ウインザーホテルというよりエイペックスの方が通りが良いかも知れません。
バブルが破綻したころには安い料金で大安売り、ゲストが客室にコンロを持ち込み鍋を突付いていたこともあるっていうから驚きです。
そのエイペックスを引き継いだのが、窪山氏率いるザ・ウインザーホテルなのであります。
この辺の詳しいことはこの本をお読みいただくこととしましょう。
そのバブルの塔が、今や客単価5万円超、稼働率85%だというのですから再び奇跡が起こったというわけですね。

今後、窪山氏にホテル運営を託す企業が数多く現れることでしょう。しかし、氏の哲学を理解できるオーナーが果たしてどれだけいるか。札束で横っ面を張るようなオーナーは氏のお眼鏡に適わないでしょう。

日経トレンディ ビジネスホテル格付けを斬る 名古屋編 [ホテル(その他)]

日経 TRENDY (トレンディ) 2008年 08月号 [雑誌]

日経 TRENDY (トレンディ) 2008年 08月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2008/07/04
  • メディア: 雑誌

名古屋はやはりホテル不毛の地だったのか

 

ページを開いて驚いた。名古屋のビジネスホテルのラインナップは正に底辺での団子状態と言ってよい。1・2位こそ60点代だが、3位以下はいきなり40点代となる。今まで斬ってきた東京、大阪、札幌、福岡ではもちろん見られなかったレベルの低さを呈している。

 

まずは名古屋を斬る!

皮肉ではなく今回の名古屋編を楽しみにしていた。名古屋はビジネスホテルのメッカであること。トレンディのWEB版次号予告でも「今一つ盛り上がらない名古屋のホテル市場・・・本当に多くを望めないのか」とやや思わせぶりともとれる内容だった。しかし、実際は文面どおりだった。
なぜ、大都市名古屋にホテルが育たないのか?記事中にもあるように一つには宿泊需要の大量発生地である首都圏、関西圏から十分日帰り可能という“立地の良さ”が裏目に出ているというのも一つだろう。

しかし、今やホテルは単なる宿泊産業ではない。宴会、レストランなど多くの機能から成立しているのだ。大都市圏のライフスタイルとして小金が貯まればホテルで食事というシーンが定着して久しいが、財布の紐が固いといわれる名古屋ではまだまだ浸透していないようだ。 
また、名古屋の閉鎖的な地域性もホテルの進出を阻害しているといえよう。かつて、東急ホテルが進出を表明した際には地元業者が反対し商工会議所が仲裁に入るという大都市では見られない事態が発生している。

良いホテルのない町は見向きもされないし、用事のある人以外は訪れない。ここに名古屋が通過都市から脱却し、トヨタ以外の情報を発信する真のメトロポリタンとなりうるヒントがあると思えるのだが。

 

格付けが低い理由
格付け上位3ホテルは①ダイワロイネットホテル名古屋駅前②リッチモンドホテル名古屋納屋橋③ザ・ビー名古屋

前述したとおり、上位2ホテルは68点、66点をマークしているものの3位は急降下して47点である。

この結果について記事では「シティホテルとビジネスホテルの空白ができている」。つまり、トレンディがいうところの“新型ホテル”の不在が原因と分析している。確かに空白地帯が生じている理由としては納得できるが、全体的なレベルの低さを説明するには不十分であろう。
私は新型ホテルの不在に加えてシティホテルの不在が全体的な水準を引き下げた要因ではないかと考える。今までの4都市では廉価で客室を販売するシティホテルが参入した結果全体の平均点を引き上げていたが、名古屋のラインナップにはシティホテルは皆無である。

シティホテル不在の裏側
名古屋だけに見られるこの明白な特性になぜ記事が言及していないのか甚だ不思議である。この格付けでホテル選択の基準となっているのが料金帯である。東京以外では5千円~1万円が基準となっている。つまり、名古屋ではこの価格帯でシティホテルは利用できないということになる。中京圏の中核である名古屋だが、都市の規模に比してホテルの選択肢は非常に限られているし、そのレベルも低い。それは利用者にとってレベルの低いホテルに高い料金で泊らされるという実態を生んでいる。そんな町に魅力を感じるだろうか?名古屋市が標榜するコンベンション都市としても大成するとは思えない。
今後は新型ホテルがぬるま湯に浸ったシティホテルをどんどん突き上げて名古屋のホテル市場を活性化してくれればよそ者にも面白い町になることと思う。

これぞビジネスホテルランキング!
今まで「ビジネスホテルランキングといいながらシティホテルが混入しているではないか」と苦言を呈してきた筆者にとって今回の名古屋編は結果的にビジネスホテルに絞り込まれており純粋に各ホテルを比較でき安心して読むことができるのである。横一線に並んだ各ホテルの客室の写真の中でルートインが快適そうに見えるのだから面白い。

■またも手抜きか
かねて指摘してきたホテルの正体を明らかにすべき、つまり、リブランド、営業譲渡などで対象ホテルの属性が変わっていれば、その点を明らかにせよということである。この点については前回の「札幌・福岡編」では随分改善されていたが、今回再び手を抜かれてしまったようだ。ザ・ビー名古屋は昭和54年開業のホテルライオンズプラザ名古屋が前身であるし、ホテルコムズ名古屋は三井アーバンホテル名古屋がリブランドしたもので、さらにその前は名古屋金谷ホテル(昭和54年開業)である。他にもホテルウイングインターナショナル名古屋=サンハイツホテル名古屋(昭和59年開業)であるし、アパヴィラホテル名古屋丸の内駅前も怪しいなあ。

不満が残る調査ホテルの絞込み
これもかねがね苦言を呈していたのだが、なぜ数多あるビジネスホテルの中でこれらのホテルが選ばれたのかという点である。価格帯5千円~1万円を基準に据え、過去4年以内の開業、改装、建て替え、増築というのが選定条件とある。他方、客室選定では今まで掲げていた「改装済みの客室を優先したこともある」との但し書きが消えている。過去4年以内の開業という条件では前項の各ホテル他失格多数である。故に開業年を明記し、備考として何年名称変更という具合に必要な情報を提供する必要があると思うが無理だろうか。中には昭和48年開業のチサンイン名古屋などというビジネスホテルの化石のようなホテルまで登場する。チサンホテルからリブランドしたのは最近かも知れないが、他に幾らでもホテルはあるだろうに。それにしても、このチサンイン、デスクはあるが、椅子がないというのは如何なる理由によるものか?まったく、最初から外しておくべきだろう。晒し者、或いは受け狙いとしかいいようがない。
このような骨董品を引っ張り出す暇があるのに何故か新型ホテルの旗手であり、名古屋を本拠とするホテルトラスティがエントリーされていないし、同じく名古屋ベースのワシントンホテルプラザも入っていない。非常に疑問である。もっと丹念にホテル選びをしていれば今回のような悲惨な結果は出なかったかも知れない。全体的に今回の取材は非常に拙速な印象が否めないのだ。
また、客室選択ではホテルコムズには“アーバンルーム”と称する上級客室があり、そちらを選択していれば空白を埋めていたかも知れない。

名鉄よおまえもか
札幌・福岡編では九州を代表する企業グループである西鉄系の西鉄インを酷評してしまったが、名古屋でも名鉄が同じことをやっているようだ。名鉄インの独房のような客室、相も変らぬ10時チェックアウトなど、なにを今更古臭いビジネスホテルを展開しているのかと首を傾げてしまう。名鉄ブランドを信頼して訪れたゲストはさぞがっかりしているだろうに。

今回は、名古屋の皆さんにとってたいへん耳の痛い記事になってしまったかも知れません。ご批判があれば是非お聞かせ下さい。今後の参考とさせていただければと思います。


日経トレンディ ビジネスホテル格付を斬る 札幌・福岡編 [ホテル(その他)]

日経 TRENDY (トレンディ) 2008年 07月号 [雑誌]

日経 TRENDY (トレンディ) 2008年 07月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 日経ホーム出版社
  • 発売日: 2008/06/04
  • メディア: 雑誌
たいへんよくできました。

さて、過去東京編・大阪編を斬って参りましたが、お陰様で私の記事の中ではトップクラスのアクセスをいただきました。コンスタントに今も連日のようにご来訪いただいており感謝しております。
今回は非常に遅まきながら札幌・福岡編ですが、正直なところわたくし、少々ニンマリしております。と申しますのも

過去、私は以下のようなコメントをいたしました。

①ゴマンとあるビジネスホテルの中からなぜ誌面のホテルが選択されたのか?料金面だけでは説明がつかず、白羽の矢が立った理由を明確にすべき。
②ビジネスホテルというが、現在ではホテル業態間のボーダーレス化が進んでおりビジネスホテルという名称で括るのは無理があるのではないか
新規開業かリブランドか明確にすべき
古いホテルから名称が変わったホテルについては平成○○年開業とだけ記すのではなく、元××ホテルなどと正体を明らかにすべき。

概ね以上のような点について苦言を呈したのであります。そして、札幌・福岡編ではそれらがかなり改善されております。

■改善されたと評価される点

①について
残念ながらこの点については従来と変わりがない。一応、料金帯が明記されてはいるものの、それだけで選べば他にもたくさんのホテルがあるわけで、なぜ誌面のホテルが取材対象となったのか不明である。
特に福岡では「よくこんなホテル探してきたな」と逆に感心させられた。

②について
この点では従来使用していた”新型ホテル”という分類を図解で判りやすく説明しており改善が見られた。クロスホテルなどビジネスでもシティでもない新興の宿泊特化型ホテルを新型ホテルと呼んでいるようだ。

③について
この点に関しては大きく改善されており、私が知る限り全てのリブランドホテルの前身が明記されている。中には元ラブホというのもあり面白い。このホテルは旧名称は明かされていないが、これで十分であろう。以前に宿泊され「どうも間取りが変わっていると思った」と疑問をお持ちの方も解消したのではあるまいか。
トレンディは過去「都市ホテルランキング」でもこの点が非常に不明確だったので大きな進歩といえよう。
きっと私同様の疑問を持った読者が多くいらっしゃったに違いない。

というわけで”たいへんよくできました”。

※後で気づいたが、JALリゾートシーホークホテル福岡の旧名称シーホークホテル&リゾートが抜けていた。

■札幌編雑感
札幌の上位3ホテルは①クロスホテル札幌 ②札幌プリンスホテル ③リッチモンドホテル札幌駅前

札幌編では正にシティホテルもビジネスも、そして新型ホテルも入り乱れての大混戦となっている。北の迎賓館を自他共に認める札幌グランドホテルやオリンピックの際IOCの本部となった札幌パークホテルまでが参戦している有様である。この点についてもオフシーズンには単価の低いツアー客で稼働率の底上げをはからざるを得ない札幌のマーケットについて地元関係者のコメント入りで解説がなされている。

札幌グランドに関しては500余室を埋めるためツアー客対応に走りすぎる嫌いが見られ、特に東館客室の質の低さが目立つが、順次改装されておりいずれ解消されるかもしれない。(今回対象となっている客室は個人客向けの本館である)。
札幌パークも筆者が20年ほど前に宿泊した客室がそのままの状態で残っており、競争力の低下が懸念される。
これら三井観光系のホテルは数年前から過去の栄光を取り戻すべくハード、ソフトともにテコ入れをはかっており久し振りに利用してみたい。ぜひ、次なる「シティホテル格付け」では奮闘してほしい。

なぜこのホテルがノミネートされなかったのか不思議なのが真駒内のAホテルである。1000室余を誇るビジネスとしては札幌有数のホテルである。前身はGホテルチェーンに属し修学旅行生が火遊びをしていて焼死したという悲劇に見舞われ大手ビジネスホテルチェーンであるAホテルに営業譲渡されている。現在の名称にはリゾートが付いているので外されたのか?

今回、上位にランクされたホテルにホテルフィーノがある。偉そうなことを言いながらこの特集で初めて知った次第。調べると大分にもあり、今秋には蒲田にもオープン予定だとか。客室に関しては何が必要かを吟味して設計しているのかがHPからも伝わってくる。最近のホテル業界は新興勢力の参入も盛んであり老舗の暖簾だけでは集客できない時代でありますな。

福岡編雑感
福岡の上位3ホテルは ①ホテルレオパレス博多 ②JALリゾートシーホークホテル福岡 ③リッチモンドホテル福岡天神

福岡は札幌と同様、単身赴任族、ホテル好きにとっては魅力的な町である。ここも正にボーダーレスのようである。福岡の迎賓館西鉄グランドホテルホテル日航福岡も登場している。場合によってはオークラもありかと思われたが、なぜかノミネートされず。その代わりといっては何だが、元々ワンルームマンションとして設計されたと思しきホテルまで見つけ出している。アクセスも非常に悪くウケ狙いか?
福岡のホテルマーケットは私が知る限り、相撲や学会などイベントがあるとすぐに満室になり比較的売り手市場という印象があるが、新設が相次いでおり現在は如何だろう?

西鉄グランドは、かつて利用したときにはメンテが悪く、荒廃していたが、3年前に宿泊した際には全館改装の後で素晴らしく甦っており安堵したが、今回の調査では点数は伸びなかったようだ。ソフトもしっかりしていたのに残念。

西鉄の名が出て来たので西鉄インの話を。お膝元の福岡編でも西鉄イン博多がけちょんけちょんに酷評されている。曰く、「内装は昔ながらのビジネスホテル・・・、家具は高級感に乏しく、浴室も質感は低い。朝食はホテル併設の居酒屋で・・・朝らしい気分になれない」。全くそのとおり。
かねがね西鉄インの展開には疑問を感じていた。ビジネスホテルチェーンとしては新興勢力である。なのに中身は全く旧態依然としたビジネスホテル。それでいいと言われればそれまでだが、これでは九州の雄西鉄の看板が泣くだろう。特に旗艦店ともいうべき博多はシティホテルも真っ青な外観からは想像できないチープな中身である。なぜ、もう一工夫できないのか?部屋の造りといい、10時チェックアウトといい、居酒屋での朝食といい全く過去のビジホなのだ。そんなホテルを大阪、東京にもどんどん展開している。遠からず行き詰ってしまうのではないかと余計な心配をしてしまう。西鉄の名に懸けて今一度見直してほしい。

なお、サットンプレイスホテルなるホテルが登場しているが、筆者とはなんら関係ございません。ちなみにこのホテル、小紙金沢特派員が今年1月に取材しているが、「インテリアは良いが、やっぱり狭い」とのレポートを書いている。

■次号は名古屋編
やっと間に合った。なにしろ8月号はあさって発売なのだ。ビジネスホテル格付けはラストを飾るにふさわしくビジホのメッカ名古屋である。トレンディの予告では「いまひとつ盛り上がらない名古屋のホテル・・・」とあるが、私も同感である。大都市としては選択肢に欠け、おまけに高いのだ。
鋭い取材で面白いホテルを掘り起こしてくれるのだろうか。名古屋編はいよいよ7月4日発売です!

☆日経トレンディ ビジネスホテル格付けを斬る 大阪編は コチラ  東京編は コチラ 

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