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知られざる奈良のホテル事情 [ホテル(その他)]

先日の日経新聞関西版によると奈良市に続いて今度は奈良県がホテル誘致に乗り出すそうだ。今さら何をやってるんだという感じである。

◆まかりとおる殿様商売
奈良の宿泊施設、とりわけ奈良市内の施設の評判は総じてよろしくない。古都ならではの閉鎖的な土地柄なのだろう、世界的な観光都市でありながら最も肝心な観光インフラである宿泊施設に関しては全くお寒い限りである。奈良のホテルといって思い出すのは「奈良ホテル」程度であろう。このホテルにしても文化財的価値はあっても全く現代のニーズには適応できていない。婚礼シーズンの土日に行ってみると何組もの新郎新婦が狭い通路を右往左往している光景に出会う。通常複数の新郎新婦が鉢合わせするのはご法度である。披露宴会場が少ないため1ヶ所しかない洋食ダイニングは宴会場に転用され、食事に訪れた客は小宴会場に特設された窮屈なスペースに押し込められる。無愛想なサービススタッフが投げ捨てるように置いていったメニューは値段だけ一流である。大阪市内と比べても格段に高いのだ。このような殿様商売が可能なのは偏に競争相手がないからである。これなどまだましな話でオンシーズンに市内の宿泊を予約しようと電話を入れると「お客さん、今頃言ってきて取れると思ってるんですか」と嘲笑されたなどという信じ難い話がまかり通っている。この辺の話題は産経新聞関西版の昨年5月1日から「奈良にホテルを」と題した連載記事に詳しい。実際に統計を見ると奈良県でのデータになるが、ホテルの軒数は全国46位、室数ベースになると全国最下位である。信じられない数字だが、これが世界的観光地奈良の現実である。

◆危機に瀕する奈良の観光
その奈良が観光客減少に喘いでいる。修学旅行の多様化により最近では定番であった奈良を訪れる学校が減少し入り込み客が落ち込んでいる。また、魅力的な宿泊施設が少ないため経済波及効果が大きい宿泊客がホテルの整った大阪・京都に逸走するなど観光都市としては深刻な状態である。こと宿泊施設に限っていうとはるか昔の修学旅行客を目当てにしていた大部屋中心の旅館が”個の時代”に対応できず業績悪化が深刻だという。その結果閉鎖的な市場はさらにその度合いを強めていき新規業者を拒否し、ますます宿泊客が遠ざかる。まさに悪循環である。有り余る観光資源と世界的知名度の上に胡坐をかき、惰眠を貪ってきた奈良の観光業界の当然の帰結である。

◆動き出した行政
ようやく危機感を感じ始めた行政が重い腰をあげ始めたようだ。平成22年に予定されている「平城遷都1300年祭」開催を起爆剤に観光奈良を復活させようという目論見である。奈良市はJR奈良駅前の再開発用地にプロポーザル方式でホテルを誘致し、昨秋「マリオットコートヤード」(COURTYARD by Marriott)に決まった。(画像)ちなみに応募したデベロッパーは3グループだけだという。この土地はもともと百貨店を誘致する予定だったが、応募がなくホテルに転用している。従って当初からホテル用地だったブロックに建つ「ホテル日航奈良」(旧三井ガーデンホテル奈良)と向かい合わせという配置である。全く場当たり的な都市開発である。このホテル誘致に当たっても既存宿泊業者からは反発の声が上がったという。曰く「ただでさえ稼働率が低いのに新ホテルの誘致などもっての他」だと。第一級の観光資源に恵まれた土地でありながら宿泊施設は全国最低レベル。にもかかわらず稼働率が低いとはどういうことか。答えは一つ、既存の宿泊施設に魅力がないからだ。いい加減に目を覚まさねば観光奈良の未来はないだろう。

マリオットコートヤードの概要は地上11階、客室297を擁する宿泊特化型ホテルになるという。日本ではまだ知名度の低いこのブランドがどれほどの集客力を発揮するのか見ものではある。開業は平成22年春の予定。 さて、先日の新聞記事だが、今度は県がホテル誘致を表明した。平城宮跡に比較的近いということで近鉄新大宮駅近くの県営プールを廃止し、跡地に300室クラスの国際的でハイグレードなホテルを望んでいるとか。できれば集客力のある“外資系”がよろしいそうだ。まずは外資系というのがいかにもホテル不毛の地のオエライさんらしい発言である。 外資系ホテルを誘致するリスクを知っているのだろうか?先の奈良市の誘致策でもやっと出てきたのは「マリオット」である。ここに来てさらに県が外資系なんて指名して誘致できる見込みがあるのだろうか?立地としては奈良駅前よりも苦しいはずである。そこに皇族、国賓クラスも受け入れられる外資系なんて言うと非常に限られてくるはずだが。後になって民族系ホテルチェーンに進出を要請しなければならないような事態を招かぬよう頑張って誘致活動を展開していただきたい。開業を平成22年秋と定めているそうなのであまり時間もない。

いささか辛口に過ぎる内容になってしまったが、私は奈良という土地が好きである。何度も訪れている。しかし、その度に競争意識もホスピタリティもない観光業者に不愉快な思いをさせられるのが残念なのだ。そろそろ行政も民間も目を覚ましていただきたいと願う。  
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コメント 4

Fuzzy

奈良がホテル業界にとって魅力的なところであれば、もっと早期に国内業者が触手を伸ばしているだろうと思うのですが、何がハードルになっているのでしょうか。
関西は、奈良・京都・大阪と比較的距離が近いところに国際的な観光地があるため、奈良でいまさらホテルを建てなくてもよいということになるのですかね。

われわれも、奈良で会合するときには、橿原市のホテルでやっちゃいますからね。
by Fuzzy (2008-02-16 08:59) 

京葉帝都

現状からしてホテルの積極的な誘致に乗り出すのは必然的な流れかと思います。近鉄のホテル計画は進んでいるのでしょうか。6年前に奈良に観光に来た時は、薬師寺、唐招提寺、橿原市の今井町を廻りました。前後は京都に宿泊し近鉄で往復の日帰りでした。このようなパターンの人はかなりいるのではないかと推察されます。奈良市を中心として県内の都市がグルメやライブハウスの楽しみがあるなど夜も魅力的な街であってもらいたいものです。
by 京葉帝都 (2008-02-16 13:04) 

サットン

ファジーさん

奈良にホテルが少ないのは種々の事情から考えて市内の宿泊施設の多数を占める小規模経営の業者を保護するためではないかと思われます。行政と業界のなれ合いの結果かと思います。
しかし、行政はこのままでは泥沼から脱出できないとホテル誘致を表明。ところが、旅館組合はこれを行政の裏切りと捉えたのか猛反発していました。この模様は’06年6月にNHKの番組でも放映されていました。
by サットン (2008-02-17 14:37) 

サットン

京葉帝都さん

おっしゃるとおり、ホテル誘致は必然だと思います。コンベンション都市を宣言しておきながらホテルがなければどうにもなりません。
実は奈良市がホテル誘致を表明した際の条件が「コンベンションホールを備えたホテル」とありますが、ふたを開けると宿泊特化型。既存施設との摩擦が少ない点が評価されたそうです。全く腑に落ちませんね。今度は県がコンベンション型ホテルを誘致とはますます不可解です。
近鉄のホテル計画はほとんど話題に上ってきません。おそらく伊勢志摩方面の立て直しと阿倍野の新ビルへの誘致に懸命なのではないでしょうか?
by サットン (2008-02-17 14:49) 

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