阪急嵐山直通列車同乗記 [鉄道の旅]
興味津々の神戸線ー京都線直通列車
▲直通列車ヘッドマーク
■熱気を帯びる西宮北口駅
西宮北口と嵐山を結ぶ直通列車が5日間の限定ながら運転を開始した。なにしろ神戸線と京都線の直通列車は大阪万博以来38年ぶりということで鉄道好きの間では「神戸線と京都線をどのような経路で結ぶのか」、「使用車両は何系か」と話題沸騰。
私も運転2日目の11月18日(火)にさっそく乗ってみた。
▲西宮北口駅のあちこちに告知が
西宮北口発は10:20である。10時過ぎに現地に着いて驚いた。列車が出る3号線の乗車位置には既に10~20人程度の列ができている。直通列車とはいえ所要時間は十三乗り換えの場合とほとんど変わらないため一般利用客の姿は少ないだろうと予想していたのだが。
もちろんファンも大勢詰めかけており、その異様なムードに「いったい何事か」と駅員に尋ねる乗客の姿も見られた。
▲発車標はこれだけ
案内放送が繰り返し中津、梅田には停まらない旨注意を促している。
10:15発の梅田行き特急が発車するとホームの発車標に注目が集まる。果たしてどんな表示が出るのか。ところが、表示されたのは「10:20、臨時」だけである。せめて嵐山だけでも表示できなかったのだろうか。
▲使用車両は7000系6連
さて、いよいよ主役の登場である。
列車は既に神戸方の引き上げ線で待機しており特急が出るや静々と入線して来た。車両は私が予測した5100系ではなく7000系であった。
▲列車の表示も臨時だけ
こちらも表示幕は「臨時」だけで行先は空白。
ただし、ヘッドマークを掲げるとともに側面には「臨時 西宮北口ー嵐山」の紅葉をあしらった大型ステッカーが貼付されている。
▲側面ステッカー(左) 十三駅2号線(右)
■神戸線~宝塚線~京都線
慌ただしく西宮北口を発車した列車は神戸線内十三まで各駅に停車していく。各駅のホームには助役クラスが待機しており案内に努めている。乗車率は各車両10人前後の立ち客がいる程度だろうか。もちろん先頭車は鉄ちゃんで満員だが・・・。
十三が近付くと「次は京都線の桂まで停まりません」と放送が流れる。非常に新鮮である。
▲中津を通過し宝塚線へ 隣は京都線列車
十三を出るとこの列車の一番の見せ場である京都線への転線の模様に興味が集中する。
さすがに一気に京都線に入ることはできずいったん宝塚線に転じ梅田駅には6号線に入る。デイタイムには使用されていない宝塚線ホームである。
▲ものものしい梅田駅6号線
事前の告知では梅田駅では乗降不可となっていたが、実際には降車側ドアだけが開き何人かが下車した。誤乗客の救済手段だろうか。なにしろ次は桂まで停まらないのだから。ホームには多くの制服社員が立ちなにやら緊張したムードが漂う。
▲この列車専用の停車駅案内図
▲淀川橋梁で河原町行準急と並走
5分程度の停車で梅田を発車。宝塚線の線路を走行する。隣の京都線には準急河原町行が並走している。こちらも京都線に入るのに大丈夫なのだろうか。
▲十三駅手前で京都線に転線(左) 2度目の十三駅は5号線に(右)
案の定十三駅手前で場内信号に引っ掛かりしばらく停車。5号線が空き次第徐行で進入しいったん停車する。もちろんドアは開かない。
先行しているのは停車駅の多い準急である。一方こちらは桂までノンストップ。あまりスピードは期待できないかなと思っていたが、途中茨木市で高槻市行き普通を、そして高槻市でその準急を追い越した。
▲アンケートにご協力を
車内はというと十三を出た後から阪急の制服社員が数人でアンケートを配布している。主な内容は「この列車を知っていたか」、「何を見て知ったのか」、「この列車が無かったら嵐山には行かなかったか」など十数項目に上る。どうやら阪急はこの列車の定期化をかなり真剣に考えているようだ。
記念品に阪急オリジナルクリアホルダーをもらった。
▲9300系をデザインしたクリアホルダ^-
▲雷鳥と一瞬の出会い
アンケートを記入していると大山崎の先で並走する東海道線に雷鳥が現れ慌ててカメラを構える。
▲桂駅C号線に到着
十三を出て以来大した徐行もなく案外すんなり桂駅C号線に到着する。乗り換え客がどっと乗り込みラッシュに近い混雑となる。平日なのに大した人出である。
▲終点嵐山に到着
11:33終点嵐山に到着。西宮北口から1時間13分の旅である。
一時ホームが人の波で埋まる。
▲夕方の出番までここで休む
列車の先頭部には大勢の人垣ができ撮影会の様相を呈する。
一段落するとヘッドマークが取り外されパンタも下げて15:51の出番までここで待機するようだ。
▲お帰りも臨時直通列車で
▲2300系との並び
▲印象的な嵐山駅の照明
▲“紅葉だけやあらしません” “行ってみるしかあらしません”
阪急は嵐山への誘客キャンペーンを実施中。来春には特急用6300系をリニューアルして投入するなど並々ならぬ力の入れようである。
今回実験的に運転された臨時直通列車、今後どうなるのか注目したい。
※その後の新聞報道では十三駅折り返し線は直下を通る府道の拡幅工事に伴い使用休止中とのこと。
すごい人の数ですね~。やっぱり紅葉のシーズンだからかな。
直通列車は、『とりあえず走らせてみて、どの程度の需要があるか』を見る試験的な要素が強いように思えますが、そのために専用の停車駅案内まで用意したんですね。
そこまでやるなら、ヘッドマークも少し華やかなものを準備して欲しかったような(^^;)
by うたに (2008-11-19 12:33)
この列車気になってましたが、詳細なレポートをいただきありがとうございました。一緒に乗っていたような満足感がありました。
しかし、梅田で逆転してまで定期運用する必要があるのか少し疑問です。
by ファジー (2008-11-19 12:44)
詳細レポ、お疲れさまです^^
なるほどぉ、7000系でしたかぁ。
方向表字幕の設定や うたに さんのコメントを総合的に斟酌すると、比較的唐突に企画されたのかなぁとも伺えますね。
すなわち、7320Fとともに7000系のフルカラーLED表示器付きリニューアル車が落成していたら、サットン さんの杞憂も晴れたのにね^^。
一番興味深かったのが、十三〜梅田間の走行経路。
>淀川橋梁で河原町行準急と並走…
これですよ!(^^)
やはり本線走行車を優先させているわけですな。
ま、いずれにしても、各線のダイヤの空き時間を上手くぬってますよねぇ。
おもしろかったです^^。
総じてイベント企画の着想としては面白いと思いますね。
通常ですと旅行会社が観光バス仕立てで実施する小規模ツアーみたいなところでしょうかね。
by hankyu8200 (2008-11-19 17:53)
netの記事で見て知りました。が平日だけなんですね。週末、今度の3連休あたりに設定してくれれば使い道ありそうです。(3連休は梅田からの特急もめちゃくちゃ込みますし)
行き先表示板はちょっと物足りないですね
by undo (2008-11-19 22:28)
うたにさん
この列車、平日の5日間だけの設定からして多分に実験的要素が強いと思います。
おっしゃるとおりヘッドマークのデザインはもう少し色気があっても良かったかなと。単なる看板という感じです。
by サットン (2008-11-20 11:36)
ファジーさん
過分なコメントをいただき恐縮です。
確かに所要時間の点から考えるとメリットは少ないと思います。狙いはやはり乗り換え不要と早めに並んでいれば座れるという点で神戸線沿線の需要を喚起しようということでしょう。特に帰路には有効かと感じました。
by サットン (2008-11-20 11:46)
hankyu8200さん
今回の企画、ご指摘のとおりチグハグな点が散見されにわか仕立てという感じは否めません。嵐山キャンペーンを展開する過程で派生して来たのでしょうか。反面京都線に入ってからも2本の列車を退避させており予め織り込み済みのスジなのかも。JRがネットワークを武器に攻勢を続ける中自社のネットワークを最大限生かして反撃に出ようとの意図を感じました。
by サットン (2008-11-20 12:00)
undoさん
嵐山行きなのになぜ平日なのか?私もそう思いました。でも嵐山は平日にもかかわらずすごい人出。実験するなら休日はリスクが高いかなと納得しました。アンケートの回答を加味し何度か実験を繰り返し休日にも設定するのかも。
by サットン (2008-11-20 12:07)
気になる電車でしたので、運行状況のご報告は、大変参考になりました。臨時列車として、定期的に運行されるようになるのかもしれませんね。そういえば、十三駅大阪寄りにある引込み線(かつて、神戸・京都間の臨時が走った際に使用されていたもの)が、廃止されていました。いろいろな経緯があるのでしょうね。ただ、現行の京都線のダイヤですが、特急の大宮通過・多すぎる特急の停車駅、先行列車に頭を抑えられて思うようにスピードの上がらない特急など、未だに疑問が残ります。
by のり (2008-11-20 21:55)
サットンさん。はじめまして。
詳細なレポート読ませて頂き、ありがとうございます。
どの様な運行になるのか、あれこれ考えていたのに、私は乗れそうにないので、サットンさんの記事を読んで、すっきりしました。
車両は、7000系でしたか。専用のヘッドマークも付いていますね。
京都線内での定期列車の追抜きは意外でした!ということは、桂の停車時間は長めですか?
平日なのに乗客結構多いですね。しかし阪急さん動員社員数、すごいですね(採算大丈夫?)。この列車、土日にも走らしてほしいですね。
by YOO (2008-11-20 23:40)
のりさん
今回のルートは神戸線車両が正雀工場に出入りする際に使用されるルートをそのまま使っているようです。
京都線特急は長らく迷走状態にあるように感じますが、9300の増備ピッチも加速してきたようでロングシート車は徐々に駆逐されるのでは。
大宮通過は驚きました。地元の反発もあったでしょうに。通学でお世話になっていましたので寂しくもありますが、ある意味英断といえるのではないでしょうか。
by サットン (2008-11-21 11:20)
YOOさん、いらっしゃいませ!
YOOさんのブログも拝見しました。車両は候補に挙げていらっしゃった中の一つ7017Fでした。お見事!
桂での停車時間はわずかでした。乗降が終わるとすぐに発車という感じ。
嵐山には滅多に行きませんが、人出の多さには驚きました。阪急が目を付けたのもわかります。是非定期化してほしいですね。その時はきちんと表示幕も用意して。(笑)
by サットン (2008-11-21 11:29)
本線から支線へ直通する列車が少なくなってきた現在、オール阪急と言っていいような経路で嵐山に乗り入れする企画はとても新鮮です。10年位前に初めて嵐山線に乗った時はGWで十三から乗車した急行は直接嵐山に向いました。今は元気な高齢者が観光地へどっと行くので平日でも込み合うのでしょう。箱根湯本でも同じような光景が見られました。昨日夜に東京から新宿まで中央線の通勤快速に乗ったのですが、河口湖行(6両は大月迄)でした。次の快速は、高麗川・武蔵五日市行(拝島で分割)でした。東京〜新宿から終点まで乗り通す人は僅かでしょうが、ネットワークを充分活用しているところが行き先の宣伝にもなって良いと思います。阪急嵐山駅は乗車と降車の動線が緩やかなスロープで分離されてとても機能的です。ニューヨークのグランドセントラルターミナルもホームの瑞頭部がスロープになっており、嵐山線の建設時はアメリカの鉄道施設を参考にしたように見受けられます。
by 京葉帝都 (2008-11-22 18:16)
京葉帝都さん
アーバンネットワークにやられっぱなしの阪急が自社の財産をなんとか生かそうという意気込みを感じました。その割には表示は臨時だけ。阪急社員からも「嵐山って出せばPR効果大きいのに」との呟きが聞こえました。今後の発展を楽しみにします。
by サットン (2008-11-24 11:39)
おおー、すごいなぁ。
ちょっと乗ってみたい。でも混み混みだ。
by keroro (2008-11-25 04:11)
keroroさん
今後も運転されるかは不明です。予想では鉄ちゃんに占拠されるのではと思っていましたが、一般客が多くて驚きです。
by サットン (2008-11-25 11:20)
神戸線から京都線に直通するのに、
路線図からはわからない
複雑な工夫が必要だったんですね。
紅葉の嵐山の人出の多さを実感してきたので、
是非定期化してほしいものです。
by manamana (2008-12-14 17:06)
manamanaさん
かつては十三駅梅田方に折り返し線があったんですが、数年前に撤去されたためいったん梅田まで往復しなければならなくなりました。
乗客へのアンケート結果などを加味して来春再び登場しそうな気がします。
by サットン (2008-12-16 13:37)