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京阪大津線夏景色(前編) ~京津線 [鉄道の旅]

こんな京津線に誰がした・・・

何かと欲求不満の募る東西線乗りつぶしを終え山科まで戻って来ました。今回は1000円で京都市営地下鉄、京阪大津線乗り放題の「京都地下鉄・京阪大津線1dayチケット」を利用していますので大津線方面に繰り出すことに。峠越えの駅大谷あたりで下車してみましょうか。時刻は15時を過ぎているとはいえ夏の陽はまだまだ照りつけています。

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▲京阪山科駅南側 左手のビルの下に地下鉄山科駅が

地下鉄山科駅から地上に脱出、周囲をブラブラ歩きます。学生時代、アルバイトで山科に通っていた私にとって懐かしい町ですが、駅前再開発が完了し駅周辺はすっかり変貌しており当時の面影など微塵も残っていません。バイト先は残っておりましたが。30年近くも前のことですからね・・・・・。

変わったといえばこれから乗る京阪京津線も激しく変化しております。当時の京津線はといえば2両編成の小型電車が併用軌道が入り混じる線路をちょこまか走る半ば路面電車という風情。古臭いながらも気軽に利用できる電車でした。ところが地下鉄東西線が三条ー山科間で併走することになり京津線は東西線に乗り入れることになりました。この地下鉄乗り入れが京津線の姿を大きく変えてしまったのです。そして、利用者には数々の不条理が押し付けられることに。

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▲京阪山科駅北側 大屋根を挟んでJR山科駅が隣接しますが・・・

その一つが市内中心部と山科地区の移動に際し発生した二重運賃です。例えば三条京阪から六地蔵行電車に乗り「山科駅」で下車した場合運賃は250円です。ところが三条京阪から浜大津行に乗り「京阪山科駅」で下車すると地下鉄と京阪の運賃が合算されるため340円に跳ね上がるのです。電車を降りればすぐ道路に出られる便利な京阪山科駅を利用するには90円払えっていうことです。この問題は前の記事でぼやいたとおり東西線と京津線の分岐駅を一駅西側の御陵としたために起こってしまいました。まあ、そのことは地形の問題とのことで仕方ないのでしょうが、運賃の問題は利用者目線で工夫すれば解決できたはずです。なぜ選択乗車制を導入しなかったのでしょうか。京都市も京阪も所詮は利用者の立場に立っていないということですね。
山科地区の利用者を地下鉄に誘導しようとする姑息な役人根性が見え隠れします。さらに不思議なのは京阪の態度です。かつて京津線の旅客流動の基幹は三条ー京阪山科間にありました。その稼ぎ頭とも言う区間を京都市に持って行かれることをよく黙認したと思うのです。明らかな民業圧迫です。地下鉄開業当初こそ三条京阪ー御陵間は京阪も出資する京都高速鉄道が経営に当たっていたものの結局後に京都市の直営となっています。京都市と京阪の間でどのようなやり取りがあったのか気になるところです。

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▲浜大津行の800系に乗って

東西線直通のシワ寄せを受けたのは山科地区の利用者だけではありません。JRの大津方面から三条、四条という京都市中心部に向かっていた利用者もまた犠牲者です。JR山科駅と京阪山科駅は至近に立地しているためここでJRから京阪に乗り換える需要が少なからず見られました。しかし先述したような運賃制度によりJRを降りた利用者は目の前の京阪山科を素通りし駅前広場を横切り、地下十数メートルにある地下鉄の山科駅を利用するよう強いられるのです。
この他当然御陵を跨ぐ利用者は全て運賃値上げというシワ寄せを被ることになります。
これらのデメリットに対しどんなメリットがあるのでしょうか。都心直通が挙げられるかも知れませんが、都心といってもこれといった集客施設もない御池通に直通したところでメリットは極めて限定的としかいえません。
時間短縮でしょうか。これも駅入口から電車に乗るまでの移動時間で帳消しでしょう。
まったく誰のための地下鉄直通なのでしょう。かくして京都市の地下鉄事業は全国で唯一経営健全化団体のレッテルを貼られ破産寸前の危機に瀕することとなるのであります。

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▲雨の中の峠越え(大谷ー上栄町)

気を取り直して電車に乗りましょう♪
やって来た浜大津行はもちろん800系。涼やかないでたちの夏向きの電車であります。4両編成のうち両端はクロスシート車、中間2両はロングシート車という構成。先頭車に乗り込み本線用の9000系が装備していたのと同様のシートに座ります。生憎後ろ向きではありますが、掛け心地は抜群です。列車の後方を見渡すとロングシート車は見事にガラガラ。多くもない乗客はクロスシート車に固まっているようです。

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▲併用軌道を進む頃には土砂降りに(上栄町ー浜大津)

かつての各駅停車の終着駅で車庫のある四宮を出ると車窓には谷が迫り逢坂山越えにかかります。61‰という急勾配が立ちはだかる登山電車並みの難所であります。それだけに見応えある車窓が展開するわけですが、ここで突然大粒の雨が車体を叩き始めます。ありゃありゃ・・・。峠の途中の大谷駅で下車して遥か上空を跨ぐ名神のアーチ橋や勾配途上のホームにある奇妙なベンチをご紹介しようと思っていたのですが。この雨じゃ小さな大谷駅のホームは水浸しでしょう。今回は諦めます。

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▲マーカーランプを点灯させて浜大津へ

上栄町を出て大津市内の併用軌道に差し掛かった頃には雨脚はさらに激しさを増し車窓の風景も霞むほどに。沿道を飾る「旧東海道」のバナーも滲んで見えます。そんな中、ボオーーーという京津線独特のタイフォンが霧笛のように響きます。
山科からわずか15分とは思えない変化に富んだ車窓を楽しみ最後は路面上で直角にカーブして浜大津に到着します。

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▲いよいよ雨脚が強まる中折り返す800系

大雨の中浜大津の折り返し線で待機する800系です。
地下鉄、登山電車、路面電車とマルチな性能を併せ持つ日本で唯一の電車といってよいでしょう。さぞコストのかかる電車だろうなと思って調べると・・・Wikipediaによると800系の製造コストを車長1メートル当たりに換算すると新幹線車両並だそうで。京阪にしては大盤振る舞いですな。

この後は石山坂本線に乗ってみましょう。さて、石山寺へ向かうか、それとも坂本へ向かおうか・・・・・




タグ:滋賀 京阪
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manamana

岐阜の市内線が無くなり、
地下鉄から路面電車までこなす京津線は、
とっても面白い乗り物ですね。
景色の変化も楽しめますし。
でもあえて、不便にして、厄介者扱いにしている・・・
何てこと無いでしょうね。
by manamana (2011-08-07 12:54) 

まるたろう

近畿の民鉄線の中では、自分が唯一未乗なのが、京阪の
京津線と、石山坂本線です。
乗りたい路線の一つですが、まだ実現できていません。
しかし、運賃体系は、問題大ありですね。
フリーきっぷ等をうまく使わないと、えらい目にあいそうです。
by まるたろう (2011-08-07 17:27) 

Cedar

京津線はかつて関西でいちばん好きな電車でした。
ポール集電、併用軌道ありなのに連結運転、急行追い抜きがあるなど、アメリカのインタアーバンのようでした。
~昔話はさておき、今でも地下鉄、山越え、併用軌道と魅力いっぱいの電車、一刻も早く京都市のエゴを跳ねのけて、地下鉄部分の運賃も通算制に戻すべきです。
by Cedar (2011-08-07 18:03) 

サットン

manamanaさん
京津線の車窓は天下一品ですね。わずかな距離で地下鉄から登山電車までオールインワンで楽しめるのはここだけでしょう。
地下鉄直通による利便性の低下は深刻です。乗れるもんなら乗ってみろって感じです。東西線の必要性は理解できますが、なぜ京津線の利用者がここまで不利益を被らねばならないのでしょうね。今の姿になったのは岐阜同様併用軌道が自動車の妨げになっていたというのも理由の一つのようですが果たして自動車問題は解決したのかどうか。
by サットン (2011-08-07 18:26) 

サットン

まるたろうさん
えっ!未乗ですか。もったいないですね。是非クロスシートに座ってバラエティに富んだ車窓を堪能して下さい。
残念ながら京都市の奇妙な交通政策のお蔭で割高な運賃設定になってしまっていますので賢く利用しないと。今回利用した「京都地下鉄・京阪大津線1dayチケット」はお薦めですよ。

by サットン (2011-08-07 18:37) 

サットン

Cedarさん
私が愛用していた頃は追い越し運転こそありませんでしたが、御陵までノンストップの準急が走っていました。各停用の80形のスマートなスタイルも懐かしいですね。
東西線直通のお蔭で地下鉄から山岳路線に挑むという他に類を見ない車窓を楽しめるようになりましたが、引き換えに失ったものが大きすぎますね。京都市のエゴに対し妙に物わかりの良い京阪の姿勢も気になります。
by サットン (2011-08-07 18:49) 

のり

おっしゃるとおり、現在の京津線電車には、路面電車・地下鉄・山岳電車の3つもの要素が必要ですね。蹴上付近を行き来していた80が懐かしいですね。それ以来京津線はご無沙汰です。
by のり (2011-08-07 20:27) 

ホタルの館

山科が京阪と地下鉄の2つもあるんですよね。
利用者は混乱しないのでしょうか?
by ホタルの館 (2011-08-08 03:44) 

あおたけ

長編成の地下鉄直通車両が道路を走る光景、
今や「珍百系」にも挙げられるほどになった、
楽しい場所ですね。

山科の運賃問題、せめて山科までは
特例として料金を均一にしてほしいものですね。
by あおたけ (2011-08-08 08:52) 

サットン

のりさん
東山を越えていた頃が懐かしいですね。九条山なんて寂しい駅もありました。
さまざまな問題を抱えることになった京津線ですが趣味的には見所満載です。是非お訪ねください。
by サットン (2011-08-08 10:03) 

サットン

ホタルの館さん
二つの山科駅、沿線の人々はご存じでしょうが一見さんは混乱するでしょうね。車内放送と掲示で注意を促していますが根本的な解決を図ってほしいところです。
by サットン (2011-08-08 10:17) 

サットン

あおたけさん
路上を走る4両編成、いつ見ても迫力まんてんです。よく警察が許可したもんだと思います。
運賃に関しては当初京阪が特例措置を主張したものの、なぜかあっさり引き下がってしまったようでどうも釈然としないものがあります。
by サットン (2011-08-08 10:38) 

shun

こんにちは、shunといいます。
僕も鉄マニのブログをしています。福岡に住んでいます。
どうぞよろしくお願いします。よかったら僕のブログへどうぞ。

by shun (2011-08-08 14:58) 

飛んでモアイ

浜大津駅は、構造が面白いですね。
交差点と重なっている点が独特!!
四宮?あたりの峠をゆっくり走るから、景色をゆっくり見れますね。
by 飛んでモアイ (2011-08-08 23:26) 

サットン

shunさん、いらっしゃいませ!
福岡ならネタは豊富にありそうですね。記事楽しみにしています。
今後ともよろしく!
by サットン (2011-08-09 18:24) 

サットン

飛んでモアイさん
浜大津駅、交差点に4両編成が突っ込んでくる様子は圧巻ですね。特にクルマとトラブルが起きている様子もなく共存しているのも魅力です。
by サットン (2011-08-09 18:47) 

うたに

二重運賃の件は、西武池袋線で池袋へ行く場合と、直通している西武有楽町線とメトロ有楽町線を通って池袋へ行く場合に似ています。
かねてから不満も多かったようで、ついに"だぶるーと"なる定期券がリリースされました。
でも、池袋からJR線へ乗り換える定期券の設定が無いなど、イマイチです。
by うたに (2011-08-15 11:22) 

サットン

うたにさん
なによりも腹立たしいのは望んでもいない地下鉄直通の結果、なぜ京津線利用者が大幅な値上げを強いられるのかという点です。直通前は三条どころか大阪・淀屋橋まで通し運賃だったのに。
こんな施策を看過しているとは京都市民もおとなしくなったもんだと思います。




by サットン (2011-08-15 13:25) 

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