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複々線を楽しむ 番外編 [鉄道の旅]

鉄道ジャーナル誌最新号(No.495)の特集は「複々線を楽しむ」だった。フィーチャーされたのは小田急、京急、そして定番JR西日本。京阪のことについては何も触れられていなかったのでここで勝手に番外編として「京阪電鉄天満橋ー寝屋川信号所間の複々線を楽しむ」お届けいたします。

▲京橋駅上りホームの列車案内。A線とB線の表示は完全に分離されている。

京阪の複々線の歴史は古く、昭和8年の蒲生信号所ー守口間(いずれも当時)に始まり、戦後も順次区間を延ばし昭和55年には天満橋ー寝屋川信号所間約12キロが高架複々線化され民鉄最長の複々線となり、その後東武鉄道伊勢崎線の複々線が全通するまでその地位を守っていた。
配線はいわゆる方向別形式を採用し内側線をA線と呼び優等列車が使用し、外側のB線を各駅停車に充てている。ただし、京橋ー天満橋間だけはA線を天満橋止まりの列車が、B線を淀屋橋行列車が使用する。

◆天満橋ー京橋
天満橋駅2・3番線を発車した優等列車は地上に出るとすぐに高架を急勾配で上ると下りA線を跨ぎ、最も北側の上りB線に進出する。他の3線も高架なので高架を高架で跨ぐ格好となりお陰で大阪城の天守閣が良く見える。B線に落ち着くこともなく次の京橋駅を目前に25キロの徐行で渡り線を通過、A線に移り京阪で最多乗降客数を誇る京橋駅2番線に到着する。この捩れ現象がダイヤ編成上大きなネックとなっている。
これは来秋に予定されている中之島線乗り入れに備えた措置で昨年4月16日天満橋駅のホーム入れ換えという大工事の末生まれたものである。即ちそれまでは北側1・2番線(A線に直結)を淀屋橋行に南側3・4番線(B線に直結)を天満橋止まりの列車に使用していたものを、中之島線が北側に分岐するため、行き止まりになっていた3・4番線を淀屋橋方向に掘進し本線に接続、主に淀屋橋発着となっていた優等列車を京橋駅西側の渡り線を使って外側のB線に導き天満橋駅3・4番線に発着させる必要が生じたのである。このためラッシュピーク時にはこの渡り線での交錯を回避し列車本数の確保を図るため元々B線を使用している各停を優先して淀屋橋行に設定し、逆に優等列車を天満橋止まりとする苦肉の策が採られることとなったのである。よって北浜、淀屋橋へと向かう優等列車の乗客は京橋で淀屋橋行各停への乗り換えを強いられている。

▲優等列車は天満橋を出るとすぐに同駅止まりの上下線をオーバークロスする。

▲北側の上りB線を走行。

▲京橋手前で25キロの徐行で内側のA線に転線。

◆京橋ー守口市
この区間は比較的早い時期に高架複々線化されているが、その分用地の手当てが今ほど困難ではなかったためか直線区間がほとんどであり優等列車は高速で突っ走る。残念なのは駅間が1キロ前後と短く複々線ならではの並走しながらの追い越しはなかなか見られず、各停が停車中に追い越すシーンがほとんどである。
なお、この区間では朝ラッシュ時本来はA線を走行すべき区間急行の一部が列車密度のバランスを考慮し比較的余裕のあるB線を走る変則的なケースが見られる。

▲京橋を同時発車した区間急行と各停。一駅目の野江で区急が一気に抜き去る。

▲停車中の各停を特急が追い抜く。

▲野江に停車中の下り各停の最後部から迫り来る特急を見る。

◆守口市ー萱島
緩急接続が行われる守口市駅から京都寄りは、ここまでの直線区間とは打って変わって急曲線が多くなり列車は加速減速を繰り返しながら進行する。曲線のみならず門真市駅前後では府道大阪中央環状線の高架を潜り抜けるためV字形の勾配も見られる。今では中央環状線に加え近畿自動車道、大阪モノレールの高架も頭上を跨ぐため門真市駅ホームの京橋方3分の1ほどは終日薄暗い状態である。
さて、業績好調な大阪モノレールとの接続駅である門真市駅だが、優等列車は既に各停区間に入っている区間急行しか停車しないため利便性に欠けるのが惜しまれる。なんとかA線を走る急行・準急を停車させられないものだろうか。大モノと接続する阪急南茨木、蛍池両駅は各々昇格しているのだが。

▲緩急接続が行われる守口市駅に停車中の上り急行。ラッシュからデイタイムへ移り変わる頃には8000系による急行も見られる。


▲守口市を同時発車するとすぐに急行が先行。

▲門真市駅下り方の勾配を上り特急が駆け下りて来た。

▲門真市駅上り方での追い抜きシーン。

▲古川橋で各停を9000系特急が追い抜く。大きく傾いた特急の車体が急なカーブを物語る。

▲門真市駅を発車した上り区間急行を特急が軽く追い抜く。

◆寝屋川信号所
カーブに苦しめられながら京阪本線の要衝である萱島駅に到着する。日中の区間急行とラッシュ時の各停の多くはこの駅が始終着となる。次の寝屋川市駅との間に寝屋川車庫がある関係である。ちなみに寝屋川信号所とはこの駅京都寄りの寝屋川車庫への分岐部分であろうと思われる。つまり京阪の複々線は萱島駅の少し京都寄りまでということになる。

▲地平の寝屋川車庫から出区して来た萱島始発列車。

▲寝屋川信号所上り方。こちらは中線1本で入出区を捌く。

この複々線の威力をフルに活用した京阪のダイヤ編成は絶妙である。朝ラッシュといえども優等列車はほとんどノロノロ運転もない。現在は中之島線開業を控えての過渡期にあたるので少々不満はあるが、中之島線開業時にどのようなダイヤを提供してくれるのか楽しみである。

鉄道ジャーナル 2008年 01月号 [雑誌]

鉄道ジャーナル 2008年 01月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 鉄道ジャーナル社
  • 発売日: 2007/11/21
  • メディア: 雑誌


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コメント 10

manamana

複々線といえば、京阪というイメージでしたが、
最近は関東の、東武とか小田急にお株を奪われています。
たしかに永年の悲願であった小田急の複々線化は、
あまたの困難を乗り越え、すごいとおもいますが。
by manamana (2007-11-24 07:07) 

サットン

manamanaさん、いつもコメントありがとうございます。

おっしゃるとおり、複々線絡みのネタでは京阪は過去何度も取り上げられていて食傷気味なのかもしれません。
小田急の複々線化もやっとここまで来たか、という感じですね。
by サットン (2007-11-24 11:41) 

Fuzzy

詳細なレポートありがとうございます。
中之島線が開通すれば、天満橋駅がより重要な駅になりそうですね。
地上駅時代のにぎやかさを取り戻して欲しいです。
by Fuzzy (2007-11-24 14:40) 

HIRO

サットンさま、ブログみていただきコメントありがとうございます。
京阪の複々線区間の写真、とても興味深く見せてもらいました。
詳細にわたって述べられていて、雑誌の追加記事にしたいです。
写真の普通を区間急行が追い抜いたり、特急が追い抜いたり、とても臨場感があふれています。
僕も小田急に乗りますが、追い抜きは大抵駅に停車中で特急、急行が追い抜くのでこのような迫力アル光景は見られません。
京阪は小さい頃森小路に住んでいたので思い出のある路線です。
大阪には10年ぐらい住んでいたのですが、行く機会がなく、音楽館の阪神・京阪。近鉄シュミレーションで雰囲気楽しんでいます。
先日、大宮の鉄道博物館に行き、その模様をブログに公開しましたので
行かれる時の参考にされてください。
京阪複々線とても迫力ある写真とともに内容もすごいいいと思いました。
by HIRO (2007-11-24 19:52) 

サットン

ファジーさん、いつもコメントありがとうございます。

天満橋は中之島線の分岐駅になると共に大川に面している地の利を生かして水上交通のターミナルとして整備が進んでいます。
旧松坂屋の跡を引き継いだ京阪シティモールもそこそこ賑わっているように見えます。
京阪グループも京阪百貨店がJR住道駅前に進出するなど今まで多角化で遅れを取っていたのを取り戻すべく進撃が続きそうです。
by サットン (2007-11-25 00:49) 

サットン

HIROさん、こんばんは。

身に余るコメントをいただき恐縮しております。
お母様のお加減はいかがですか?
HIROさんはかつて大阪に住んでいらっしゃたんですね。関東に移られてからも関西の鉄道に関心を持ち続けていただき嬉しいです。
私はHIROさんとは逆に転勤で7年ほど関東で生活していた関係で各路線にはそれぞれに思い出がありブログを拝見しながらいろいろと感慨に耽っております。
by サットン (2007-11-25 00:56) 

む〜さん

京阪の複々線区間、沢山の画像を嬉しく拝見致しました。思えば昭和29年8月、天満橋から守口市まで、転換クロスシート車1000形で乗ったんですが、京橋の国鉄のガードを抜けて、やがて始まる複々線区間。驚愕、興奮でした。早いもので、あれから53年。
by む〜さん (2007-11-25 23:36) 

サットン

む~さん様、大先輩からのコメント光栄です。

最近は民鉄の複々線の話題といえば”小田急”という感じなので勝手にこんな記事を書いてしまいました。
本文中にも書きましたが、比較的新しい区間の線形が悪くスピードが出ないのが残念です。でも、運転席後の展望席に座るとやはり興奮は抑えられません。例の福知山線の事故以来会社からも、できるだけ先頭車には乗るなと言われておりますが。
by サットン (2007-11-26 00:46) 

UZ

情報提供ありがとうございます。異動後いつも利用している者としてしっかりと観察していきます。慣れない業務のために寝ていたり資料に目を通す事が多いのでなかなか撮影する機会がありません。記事の画像は本当に助かりました。
それにしても朝の京都方面の急行や準急は速いですね。感心させられました。
by UZ (2007-11-26 20:04) 

サットン

UZさん、遅レスごめんなさい。

速いでしょう!大阪方面行きもほぼ信号待ちなく突っ走ってますよ。あの線路なら認可速度を120まで上げても良いんじゃないかと思いますが。
ただし、複線になった天満橋から先は淀屋橋駅の構内配線の都合もあり淀屋橋を目前にした列車が北浜のホームに編成の半分以上を残して進路の開通待ちをしていますが。
by サットン (2007-11-30 23:45) 

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