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紀伊半島縦断最長路線バスの旅 ~3(十津川温泉ー大和八木) [バスの旅]

広~い十津川村を行く


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▲お昼御飯のめはり寿司

休憩時間も終わり12:05十津川温泉を出発します。
そろそろ昼ご飯にしましょう。昨夜の苦い経験もあり新宮駅で名物のめはり寿司を仕入れてあります。酢飯を高菜の葉で包んだものでテーブルのない車内でも手軽に食べられます。

ここで新宮特急バスについて少々お勉強。先日NHKで放送された「スローなバス旅にようこそ」をご覧になった方は不要だと思いますが。
奈良県橿原市の近鉄大阪線八木駅前と和歌山県新宮駅前の間を国道168号線に沿って走る奈良交通の定期バスで通称新宮特急バスと呼ばれます。走行距離約165キロ、所要時間約6時間30分(便により多少差がある)。高速バスを除くと日本一長距離を走る路線バスです。運賃は5350円と大阪ー東京間の青春ドリームよりも高い!

以前より知る人ぞ知る存在で私も学生時代に一度乗ってみたいと思ってはおりましたが、実現せずに今日まで。ところが、NHKの番組を見てまさに焼けぼっくいに火がついた状態に!10日も経たずに乗りに来たというわけです。
ここだけの話ですが、私、大学では鉄道研究会のバス班に所属しておりました。

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▲十津川第一発電所への送水管

橋には見慣れた目にも奇怪に映る鉄橋が見えてきました。巨大な鉄管が道路を跨ぎ、さらに川をも横切っているではありませんか。すかさず案内放送があり発電用の送水管だそうで直径は4.2メートルとのこと。

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▲風屋ダム(電源開発)

続いて風屋ダムの巨大な堰堤が行く手に現れます。圧倒される光景です。
堤高101m、堤頂長329.5m、1960年に完成した重力式ダムです。

ここで取水された水が先ほどの送水管を通っているんだとか。凄いところで電気を作っているんですね。

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▲前から気になっていた風屋(カゼヤ)という地名

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▲新宮行きだっ!

ダムの景色に酔いしれていると前方からこちらと同じ奈良交通のバスが近付いて来ます。新宮行きだっ!慌ててカメラを構え交換シーンを撮影。八木を9:14に出た新宮行きの1便です。
他愛のないことですが、妙に感動します。

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▲風屋ダムの人造湖

ダム湖沿いの道を行きます。岸辺の地肌がむき出しになっており渇水気味であることをうかがわせます。
対向車はほとんどダンプか丸太を運ぶトラックです。時に行き違いのためバックしたりバックさせたり。派手なダンプのドライバーも皆やさしい。お互いに軽く会釈して行き交います。

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▲2回目の休憩は上野地で

出発後3時間余りで上野地到着。2度目の休憩は25分間とたっぷり余裕があります。
有名な谷瀬の吊橋を見物して下さいという配慮でしょうか。その吊橋はこの先のカーブの向こうにあるんだそうです。私は高所恐怖症なので遠慮しておきます。

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▲十津川村営バスと

長時間休憩の理由はもう一つ。ドライバーさんのお昼休憩もあるようです。車内でお弁当を。長時間の乗務ご苦労さまです。

13:36発車します。

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▲谷瀬の吊橋

ずいぶん長く感じた25分間の休憩の後上野地を出発します。
すぐ左手に谷瀬の吊橋が見えてきます。高さは50メートルを超えるんだとか。中央付近の人影が見えるでしょうか。見ているだけでも足がすくむ思いです。

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▲妙に広い河原も

車窓の川の表情も様々です。渓谷のような風景もあればご覧のような広い河原が現れたり。山奥になぜこんなに広い河原ができているのか不思議です。

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▲ここでもバイパス

十津川村の中央部でもあちこちでバイパス工事が行われています。川に頼らず最短距離でいくバイパスは旧道と直交することも珍しくありません。

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▲ここでもバイパス

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▲深~い谷間

こんな谷間を見下ろしながらの区間も。
以前、この谷に米軍機が飛来し低空侵入訓練を行っていて問題になったことが。こんな静かな所に戦闘機が飛んできたらびっくりしますわな。

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▲まだまだバイパス

まだ作っています。数百億単位の費用が投じられていることでしょう。そのメリットがどの程度期待できるか?残念ながら土建屋政治のシンボルにしか見えません。

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▲猿谷ダム(国土交通省)

3つ目のダムが見えて来ました。国土交通省の猿谷ダムです。

堤高74m、堤頂長170m、1957年完成の重力式ダム。

ここで少し脱線してムダ話、いやダム話を・・・・
最近、団地やコンビナートなど巨大な施設を見物するのが流行っているんだとか。ダムも秘かなブームをよんでいるようです。国交省が管理するダムでは「ダームカード」が発行されコレクターの人気を集めているそうです。私もダムには子供の頃から惹かれていたのですが足回りの悪いダムは車がないとなかなか近づけません。その点このバスは乗っているだけで3ヶ所もダム見物ができるのでありがたい存在です。
ダム好きの方にお薦めなのが財団法人日本ダム協会が運営するサイト「ダム便覧」です。全国のダムを豊富な画像とデータで楽しめます。今回登場した三つのダムの主要データもこのサイトから引用しました。
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TopIndex.html

バスは既に十津川村を抜け五條市を走行しています。

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▲終着直前の運賃表示 肝心の1番が写ってない!

猿谷ダムの次の写真がいきなり上の写真です。なぜか・・・・

一つには天辻峠を越え十津川村を脱した瞬間虚脱感に襲われた。
そしていま一つは黒渕なる停留所から高校生が大量乗車。補助椅子まで使用する状態になりました。どうやら野外活動施設でもあるらしいんですが、とにかく写真を撮るような環境ではなくなりました。
彼らは五條駅前で下車して行きましたが、残り1時間余とあって再起する気力も失せたまま最後の休憩地である五條バスセンターに到着しました。サティのショッピングセンターと同居する立派なバスセンターです。
ここで約6分の休憩となりましたが、ゴールも目前とあって席から離れませんでした。つまり、トイレにも行かなかった。
ところが、この甘い判断が厳しい状況を招きます。八木駅前まであと30分ほどというところで催して来たのですよ!一時はゴール寸前にして完乗断念かともいう状況に陥りましたが、必死にこらえました。
自分の粗笨な性格に苦笑いです。

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▲約20分遅れで八木駅前に到着!

そんな切迫した状況の中バスは市街地の渋滞に巻き込まれゴール寸前でノロノロ運転。20分程度の遅れで16:45頃終点の大和八木駅前に到着したのでした。
ここまで乗って来たのは短距離利用の地元のおばさん、本宮大社前から乗った大学生風、そして私の3人でした。そうそう、新宮駅前から乗った同好の士かと思われたお姉さんはあっさりと1時間足らずの敷屋で降りてしまいました。

下車する際ドライバー氏より「もう、当分(バスには)乗りたないでしょ」とのお言葉が。
「堪能しました」と私。
この短い会話で6時間半のバス旅は幕を閉じたのでした。


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コメント 20

うたに

いや~お疲れ様でした。それにしてもいい景色ですね!
バスの運転士さんも、狭い道をいつも大変でしょうね(^^;)
バイパスが完成したら、十津川村も秘境っぽく無くなってしまうのかなぁ。。
by うたに (2008-09-17 15:07) 

あーちゃん&父

あ、休憩時間があるのですね!ちなみに運転手さんは変わるのですか?
by あーちゃん&父 (2008-09-17 17:55) 

かもみーる

細い道路と高所の写真に縮みあがりました(><)
バイパス工事の建機やダムなど人工の産物がちょこちょこ風景に顔をだしていることが、仕方ないとはいえ残念ですよね。
まぁ、どこも日本の山村には土建のニオイがぬぐえないところはありますけどね・・・
なにはともあれお疲れ様でした。トイレ我慢は大変でしたね!
by かもみーる (2008-09-17 18:05) 

岸田法眼

路線バスの6時間以上の乗車は偉業ですね。高速道路は走らず、トイレもなく、ひたすら乗り続けるのですから。

2回目の休憩地に郵便局が写っており、25分間だと旅行貯金ができますね。“日本の郵便局で旅行貯金完全制覇”を目指しているわけではありませんが…
by 岸田法眼 (2008-09-17 19:21) 

ファジー

お疲れ様でした。
この路線は、バイパスを通らず、あえて旧道を進むところが何ともいえずいいところですよね。
ダムに歴史あり・・・勉強になりました。

ところで、五條バスセンターから八木までは短いようで高田を経由しますので、そこそこ距離がありますよ。
トイレ休憩の度に出向いておいたほうが良かったですね。
私たちの場合は、慎重な仲間がいて、簡易携帯トイレなるものをコーナンで買ってきていましたので、万一のときも何とかなるとは思っていましたが・・・。
by ファジー (2008-09-17 22:52) 

Sanohpy

長旅、本当にお疲れ様でした。
私がこれまで乗った長~い路線バスは
上高地~新島々BT(松本電鉄バス/2,100円)
ですね。ダム渡り、シェルター通り、長いトンネル通りますね。
夏山シーズンは混雑しますね。

あと、海っ端で長かったのは
網野駅~経ヶ岬(丹後海陸交通バス/1,030円)
時間があったら路線バスで丹後半島一周したかったのですが
宮津方面から来る経ヶ岬行きが極端に少なく
連絡時間もわずかしかないので諦めました。

今は、仕事場に行く時神姫バス加古川営業所の
バスにお世話になっています。

サットンさんの記事を拝見して、バス旅もいいなと
しみじみ思いました。
by Sanohpy (2008-09-18 03:37) 

サットン

うたにさん

国道168号線はダムの工事に合わせて改良工事が行われ、お陰で秘境といわれた十津川村も車があれば容易にアクセスすることが可能になったと案内放送は告げていました。
そのダムがアクセントになって車窓に飽きることはありませんでした。
by サットン (2008-09-18 08:57) 

サットン

あーちゃん&父さん

トイレを装備していないので途中3回休憩時間がありますよ。
乗務員さんは通しで乗務です。1泊2日の行路なので大きなバッグを
持っていらっしゃいました。
by サットン (2008-09-18 09:01) 

サットン

かもみーるさん

あちこちで行われている道路工事を見ているとばら撒き政治という言葉を思い出しました。沿道には自民党の有力代議士のポスターもべたべた貼られ、コイツがばら撒いてるんだなとしげしげと見たものです。
ダムは完成後半世紀を過ぎており不思議と景色に同化していました。
by サットン (2008-09-18 09:08) 

サットン

岸田法眼さん

あの郵便局を見たとき岸田さんのことを思い出しましたよ。(笑)
実際バスの乗客も1名貯金していたようです。
トイレがなくても休憩があるさと油断していると最後はえらいことに。
by サットン (2008-09-18 09:13) 

サットン

ファジーさん

168はダムとともに改良が加えられたそうです。特に最大の風屋ダム建設の際ほぼ現在の姿になったとか。
トイレの件は油断でした。コーヒーを飲んだこと冷房が効いていたこと、そして市街地に入ってなんとなく緊張感が緩んだのがいけなかったのか・・・。
そうそう、亀屋旅館に泊られたとのことですが、バス停にもかめ屋前というのがありました。泊ってみたいです。
by サットン (2008-09-18 09:22) 

サットン

Sanohpyさん

中部山岳地区のバスも車窓が楽しめそうですね。
今回のバス旅でバスマニアが自分の中で再燃しそうです。
奈良交通のバスがバンパーのカラーシールで営業所がわかるようにバスって暗号が多く使われているのでその解明をするのもおもしろそうです。
by サットン (2008-09-18 09:28) 

keroro

すごーい。ますます乗りたいです。
これだけの旅だったら、6000円弱はありです。
十津川村の吊り橋には行ってみたくて、
バスから見えるんですねーー。
とっても楽しかったです♪
by keroro (2008-09-19 02:11) 

サットン

keroroさん

6時間半遊んでもらってこのお値段!でも、距離単価は凄く高いと思います。
谷瀬の吊橋はバスの停車時間に十分行って来れる距離のようです。私は自分の撮った写真を見ただけで足が震えますが。
是非お試しください!
by サットン (2008-09-19 09:35) 

む〜さん

お疲れ様でした。トイレ無いんですね。あれは、辛いですからね。今後は、ご注意を。やれる時には、やっておく。撮れる時には、撮っておく。トイレと鉄道写真は、こんな共通点があるんですね。

いい旅をさせて頂きました。感謝!
by む〜さん (2008-09-19 17:49) 

UZ

お疲れ様でした。
この種の旅行はなかなか出来ないものです。いいもの拝見させていただきました。ありがとうございます。

それにしてももし五新線が全線開業していたらなあと思いましたね。でも智頭急行のように車両も設備も高速化していないと生き残れないでしょうね。
by UZ (2008-09-20 23:37) 

サットン

む~さん

お楽しみいただけたようで嬉しいです。
一瞬の油断が命取りになるところでした。歳のせいでしょうかねえ・・・。
by サットン (2008-09-24 12:50) 

サットン

UZさん

本当に楽しい旅でしたよ。
今後バスネタが増えそうです。(笑)
五新線は中止してよかったでしょうね。およそ需要があるとは思えません。
そもそも計画が出たこと自体不思議です。
by サットン (2008-09-24 12:52) 

nみち

実家の近くの話題だったので、楽しく拝見させていただきました。


「ムダな公共事業」という言葉はよく耳にしますが、はたしてどの要素で「ムダ」と決めるのかは難しいところですね。
このバスが縦貫する地域には、いくつかの写真にあったように、水力発電所が点在しており、関西圏の電力需要を支えています。
電気を生み出す水は森に降った雨の集まりであり、その森を支えているのは地域の林業従事者です。(残念ながら後継者の不足や高年齢化もあり、「資源としての山」はすでに荒れ始めています)
たとえば彼らのうち、奈良県側の大半は、生活物資を五條市域のスーパーなり商店に頼っています。
救急車が到着するのはこのバイパスの先にある病院です。


道路があれば電車もあり、徒歩圏にコンビニもある都市部とは、道路の存在意義が違います。
交通のすべての機能を、道路に求めているともいえるのではないでしょうか。

税金の大半は都市で生み出されていますが、その都市の生活は農村部が支えています。

道路ひとつとっても明らかなように都市と農村、互いの理解が進まなければ、税金の効率的な運用はできないでしょうね。




五新線に関しては、どこまでご存知なのかはかりかねますが、逆説的な捉え方がより事実を正しく反映すると思います。
つまり五新線の不通が、現在の状況の一因であるということです。
代替交通手段があれば、地域の政治家もバイパスに執着しないでしょう。
by nみち (2009-04-04 17:29) 

サットン

n道さん

地元の方にご覧いただいたようで幸いです。

R168のバイパスについてはちょうど先週NHKで取り上げられており、十津川村内だけでも300億とか。この額を高いと見るか安いと見るかは意見の分かれるところでしょう。病院に透析に通う老人の「命の道」という言葉が印象的でした。ただ私がバスから見た範囲では何もあそこまで抜本的な付け替えが必要なのかと感じました。確かに行き違いで停車したことは数回ありましたが。後日168が土砂災害で不通になっていることを知った時には思った以上の悪路であると認識を改めましたが、部分的な改良で解決できるのではとの考えは変わりませんでした。
最近費用対効果で道路建設事業の是非を判定するようになったようです。必要であれば採算を考えず事業を行うのが国家の役割だとは思いますが、それもどこかで線引きをしないと。難しい問題ではありますね。
車窓からやたら目に付いた二階経産相のポスターに影響されたのかも知れません。
by サットン (2009-04-05 11:20) 

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